第92話 例え全てを失っても――
「なにこれ。何であいつ仲間を燃やしてるのよ……」
ウィンが信じられないといった顔で呟いた。やってきたジャッジはハンドと同じ魔王のようであり危機感も覚えていたが目の前で起きたのはジャッジによるハンド殺害だった。
キングの動きが封じられた事と言い衝撃の展開が多すぎてウィンも思考が追いついていないようでもある。
「さて――次はお前たちのジャッジだな」
ハンドを燃やし尽くしたジャッジがキングたちに体を向けそういった。
「……そいつはお前にとって仲間じゃないのか?」
動きを封じられた状態でキングが問うた。その間も必死に呪縛から逃れようとしているようだが上手くいかない。
「我々は同じ魔王と言うだけだ。仲間意識なんて物はない。だからこそ不要であれば消すだけだ」
それがジャッジの答えだった。キングたちは顔をしかめた。
「それで次はこっちってわけかよ。そう簡単にさせるかよ!」
迫るジャッジにハスラーがつっかかっていった。キューに見立てたランスで突きを披露するがジャッジはそれもあっさり避けてしまう。
「身の程を知れ」
「――ッ!?」
ジャッジが反撃。ハスラーの小さな体は軽々と飛んだ。
「シルフィードサーブ!」
ハスラーに続くようにウィンも攻撃を仕掛ける。風の精霊の力が乗ったサーブでジャッジにボールが飛んでいった。
「少々うざったいな。イエローカードだ」
ジャッジがそう口にし黄色いカードを一枚取り出した。途端にウィンの動きが止まりサーブした球も行き場を失い勢いもなくして地面を転がった。
「くそ! 動け!」
仲間たちがやられキングも気が気じゃないのだろう。必死に抗おうとするも指先一つ動かない。
「無駄だ。私のジャッジは絶対だからな」
そう言ってジャッジがキングに近づき手を伸ばしたその時――地面から根が飛び出しジャッジに絡みついた。
「そこまでです。私の目の前で彼らには手を出させない」
ジャッジの動きを封じたのはロードスだった。御神木でもある彼女であえばこの場の植物を操るぐらいは出来る。
「なるほど。流石だな。だが大分無理しているな。愚かではあったがお前の力を弱めたという意味ではハンドも仕事をしてくれたか」
「…………」
ジャッジの言葉にロードスは無言で答えた。だが、これはジャッジの言っていることが間違いではないと証明しているようなものであった。
「ろ、ロードス様まさか本当に!?」
長老が動揺した声を上げる。ロードスがこの状態で尚キングたちを助けようとしている。例え自分の身が犠牲になろつと――その考えに長老も気づいてしまったからだ。
「わ、私だって私だって――」
アドレスがギュッと杖を握り呟いた。何か行動に移さなければと考えていたのだろう。だがジャッジに睨まれ体が竦んでしまう。
「やめなさい! これ以上、私の目の前で好き勝手はさせない! 例え私の寿命が尽きようとここで貴方を止めます!」
「ほう――ロードスよ。貴様がそこまでする価値がこいつらにあるというのか?」
「無論です。例えここですべての力を無くすことになっても、彼らを失うことの方がこの世界にとって損失です! だから私はすべてを掛けてここでお前をとめて見せる!」
「――フフッ、なるほど」
そこでジャッジが何故か笑みを浮かべる。その瞬間、根の勢いが増しついにはジャッジを呑み込んだ。
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