眠れる森の王子様

眠れる森の王子様

むかしむかし、ある国のお城で、王子さまが生まれました。

王さまは国中の人をよんで、お祝いをしました。

お祝いには、十二人の魔法使いたちもやってきました。

だけどただ一人、十三人目の魔法使いだけは、お祝いによばれませんでした。

実は、お城には魔法使いたちの使うお皿が、十二枚しかなかったからです。

お祝いによばれた魔法使いたちは次々に進み出て、王子さまにおくり物をささげました。

「かっこいい人に、なりますように」

「やさしい心を、持ちますように」

「だれよりもかしこい人に、なりますように」

　そして十二人目の魔法使いが、進み出たときです。

城中に、恐ろしい声がひびきました。

「よくも、この俺様ををのけ者にしたね。

王子よ、俺様のおくり物を受けるがいい。

てめぇは十五才の誕生日に、つむ(→糸つむぎの道具)にさされて死ぬのだ」

十三人目の魔法使いは、そう言うと消えてしまいました。

「大変だ！　どうすればいいのだろう」

人々は、大さわぎです。

「待ってください。まだ、わたくしが残っていますわ」

そう言ったのは、十二人目の魔法使いでした。

「王子さまは、死にません。

つむにさされても、百年の間眠るだけ。

それから美しい女性のキスで目を覚まし、

その人と結ばれるでしょう。」

だけど王さまは、心配でたまりません。

「国中のつむを１つ残らず集めて、燃やしてしまえ！

そして今後、つむを作ることも使うことも禁ずる」

命令を受けた人々は、つむを集めて火をつけました。

「これでよし。つむがなければ、王子もさされはしないだろう」

王さまも人々も、ホッとしました。

やがて王子さまは、すくすくと大きくなって十五才になりました。

ある日の事です。

王子さまは一人で、お城の中を歩いていました。

いくつもの階段をのぼって見つけたのは、小さな入り口です。

「ん？こんなところに部屋があったなんて。・・・ここには、何があるんだ？」

王子さまは、古ぼけた部屋に入っていきました。

中にいたのは、見たことがないおじいさんです。

おじいさんは糸をつむぐ車を、ブンブンと回していました。

「ほぉ、おもしろそうだな。おじいさん、ちょっとかしてくれや。」

「いいぜいいぜ、さあ、手をだせ。」

何も知らない王子さまは、つむぎ車に手をのばしました。　

そのとたん、つむぎ車のつむが王子さまの手をさしてしまったのです。

「ヒャッハーー！　うまくいったぜww」

おじいさんは笑い声を上げると、どこかへ消えてしまいました。

実は十三人目の魔法使いがおじいさんに化けて、王子さまを待っていたのです。

つむの毒が王子さまの体にまわる前、十二番目の魔法使いの魔法が始まりました。

王子さまは魔法の光につつまれると、その場にバッタリと倒れて、そのまま眠ってしまったのです。

魔法の光は王子さまだけでなく、お城全体をつつみました。

そのとたんに、お城の時計がピタリと止まりました。

ネズミを追いかけていたネコは屋根の上で眠ってしまい、料理番は料理のとちゅうで眠りました。

いえ、それだけではありません。

なんと空を飛んでいるトリも空に浮いたままで眠り、料理をあたためていた火も眠ってしまったのです。

なにもかもが眠ったお城の回りで、イバラだけがのびていきました。

そして長い年月がすぎたある日、立派な、

美人がイバラのそばへやって来ました。

「ここがイバラの城か。ここには賢い王子が眠っているという話だが」

美人の女性がイバラを切り分けて中に入ろうとすると、トゲだらけのイバラがスルスルと動いて、美人の女性に襲いかかりました。