14
「お前だってそんなに年齢変わんないだろうよッ!!」
雫はシルバーに向かって走り出した。そのままシルバーの数メートルまで近づくと、二本の刀を大きく振りかぶり、横薙ぎでシルバーに叩きつける。
「ッチ……。相変わらず芸の無い奴め」
シルバーはその場を一歩も動かずに太刀で受け止めた。打ち込んだのは雫であるが、シルバーの方は足元が一切グラつかず、逆に雫の足元の方が勢いに負けて押し返されていた。
「ぐっ……! ググッ……!!」
雫はなんとか刀を振り抜こうとしているが止められた位置からまったく動く気配がなかった。相変わらずシルバーは見下すような冷たい目線で雫を見ている。
「クッソ……」
力比べで勝てないとわかったのか、雫はつばぜり合いをやめ、半歩ほど下がるとシルバーに向かって乱雑に刀を振り回し始めた。だがその攻撃は全てシルバーの太刀に弾かれる。相変わらずシルバーは一歩も動いていない。
「くだらん」
隙をついて、シルバーが雫の腹部を蹴り飛ばす。まるでボールでも蹴ったかのように勢いよく雫は吹き飛ばされた。
「うごぉ……!?」
重力に従い、地面に叩きつけられるように落下した雫。
「ォ……、エェ……」
凄まじい痛みに思わず雫は吐き気を催す。直ぐに立ち上がれないほどのダメージであった。
「どうしたどうした。いつもより弱いんじゃないか? ……ああ、一人だからか」
シルバーが挑発するように腕を広げながら雫に近づいてくる。
「クソッ……! 馬鹿にしやがって……」
なんとかシルバーの射程圏内に入る前に歯を食いしばって立ち上がった雫。だが足元はふらついている。
「ほら。いくぞ」
シルバーは歩きながら雫に向かって斬撃を繰り出す。それを雫は後退しながら受け流していく。シルバーは一本の長太刀による攻撃だけだが、雫は刀二本を使って受け流すのがやっとであった。
否、完璧に受け流せていなかった。よく見ると雫はかすり傷を負い始めている。
「しつこいんだよッ!」
隙を見て雫はバックステップで距離を取ろうとする。だが、せっかく空けた距離をシルバーが一瞬で詰めてしまう。そしてまた雨あられのような斬撃が浴びせられる。
「なんだ? クールタイムでも欲しいのか?」
「ああ……! お願い……、したい……、ねッ!」
次第に自覚してくる明確な身体の痛みを実感しながら雫がそういった。
「そうか。ではくれてやる」
雫の刀の隙間を縫ってシルバーが素手で正拳突きを入れる。シルバーの腕のリーチ的に雫に届いてはいないが、雫の胸の十センチ手前まで突き出されていた。
「うおっ!?」
いきなりのことに雫は怯んでしまう。
「爆ぜろ」
「ッ!!」
シルバーがそう呟いた瞬間、『突き出してきたシルバーの拳』が黒炎を上げながら爆発した。とてつもない衝撃に雫の体は宙に打ち上げられた。
そして雫の後を追うように飛び上がったシルバーはがら空きになっている雫の背中を空中で蹴り飛ばした。
「────ガッ、クァ……!」
呼吸が出来なくなるほどの衝撃を感じた雫。だがその痛みをハッキリと感じる前に思いきり吹き飛ばされ、再び地面に叩きつけられた。
「うぐぅ……」
爆発の衝撃、蹴られた痛み、地面に打ち付けられた痛み、全てがいっぺんに雫を襲った。
「ほら。ゆっくり休むといい」
シルバーは地面に太刀を突きたてると、腕を組み仁王立ちの格好をとった。
「お、お前……。戦うのを急かしたわりに、や、やけに遊ぶじゃないか……」
雫はなんとか立ち上がろうと地面に手を着く。だが、うまく力が入らないのかそのまま手を滑らして転んでしまう。
「クッソ……。ここまでやられたのは久しぶりじゃないか……。さ、さすがに頭にくるぜ……」
「相変わらず貴様はパワーもスピードもクズレベルしかないが、体力だけは無駄にあるな。オレの部下にもそこまでの奴はいない」
倒れたまま苦しい表情を浮かべている雫を見下ろしながらシルバーがそう言った。
「た、ただの高校生を……、軍人と比べるなよ……。……いやそもそも精霊と人間を比べるなっての……」
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