11

「……ん?」

突然、シルバーエースの視線が雫から外れ、ソフィアに注目しだした。睨みつけるような鋭い視線で見つめられたソフィアは居心地が悪そうにもじもじしてしまう。

「あの、黒川君……。なんか私、凄い見られてるんですか……」

「ソフィアさん、ちょっと下がって」

雫がソフィアを庇うように左腕を地面と平行になるように上げる。

「……ああ。ソイツが例の新しい奴か」

シルバーエースは僅かだが納得したような表情を見せ、再び雫の方に視線を戻す。

「とても戦い慣れているようには見えないが。お前も助っ人を間違えたんじゃないのか?」

「この人はそう言うんじゃないよ。……つーか、なに。要件は」

「オレがお前の前に現れる理由は一つしかないだろう。……なぁ?」

シルバーが右腕を掲げる。すると付けていたブレスレットが光輝いた。次の瞬間にはシルバーの右手に燃えるような赤色の刀身をした刀が握られていた。

「ヒッ……!!」

思わずソフィアが竦む。ここ数日間で刃物はいくつか見てきたが、シルバーエースの持っている刀────いや、太刀と呼ぶ方が相応しいか。それは今まで見てきたどれよりも長い刃渡りをしていた。

「……お前のとこのお偉いさんから、もう襲われることはないって言われたんだけど」

頭ではもう無駄だとわかっているが、一応雫は訊ねてみた。

「そうかそうか。お前も軍属になったのか。一応おめでとう、と言っておくか」

どこかわざとらしくシルバーがそんな事を言った。

「オレも任務でここに来ていてな。ある神具を回収する任務なんだが……」

そう言いながらシルバーは着ていた迷彩柄のズボンのポケットから小さいSDカードのような物を取り出した。そしてそれを空中に放り投げると一瞬で形が変わった。

「あれって……」

勝平が食い入るようにその変化した物体を凝視する。その放られた物は重力に従って落下し、再びシルバーの手元に収まった。

「多分、オレっち達が探してたやつだねぇ」

シルバーが握っているそれはまさに雫たちが昨日見せられた資料とそっくりのものであった。戦車の砲弾のような、水筒のようにも見える形をしている。

「……それの回収、オレたちが任されたんだけど」

雫は嫌そうな表情を隠すことなく、嫌そうにそう言った。

「それは奇遇だな。……そうだ。あと追加で言われたことなんだが────」

シルバーは刀を振りかぶり、肩に乗せる。

「任務中に出会った奴は全員殺すように言われているんだ」

「……そのへったくそな演技止めろよ。才能ないぜ」

雫がヘラヘラと笑いながらそう言った。どこか諦めているようであった。

「フン……。慣れないことはするもんじゃないな。まあいい」

「「「「あっ」」」」

そう言うとシルバーは自分の真後ろに向かって砲弾型の神具を投げ捨てた。思わぬ行動に雫たちがあっけに取られる。

そして

「確保完了。これより回収物は私たちが管理します」

「わっとっとっと……。ふぅ~。ナイスキャッチ……」

いつの間にかシルバーの背後まで来ていた二人組の少女が投げられた神具を受けとっていた。

「……誰?」

「見たことねぇな」

「可愛いねぇ。キミたち名前なんていうの~?」

「新しいクロックナンバーの人?」

今度は雫たちが不思議そうに初めて見る少女に注目していた。

「あわわわ……。シサキぃ。私たち注目されちゃってるよ……」

「落ち着いて下さいミサキ。警戒されるのは当然です」

二人は瓜二つというレベルでそっくりな顔つきをしていた。髪型から、同じ迷彩服まで揃えており、まるで鏡でもあるかのようであった。

唯一違う点は、片方はオドオドしているのに対して、片方は非常に落ち着いているように見えることだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る