23

「ソフィアさん。あなた、またオレたちの事尾行でもするつもりでいるでしょ」

「ギ、ギクッ! ……ナ、ナンノコトヤラ……?」

ソフィアが口笛を吹きながら明後日の方を向いた。

雫は深いため息をついた。

「あんだけ怖い目にあってもまだ懲りないのかあなたは……」

黒川家を後にした雫とソフィアは現在、塔音学園の寮に向かって歩いていた。

「そ、そう言えば! なんでカービーさんとマーベルさんって仲悪いんですか!?」

ソフィアがあからさまに話題を変えようとする。

「そうやって誤魔化して……。まあ、確かにそこは気になるか」

「そうですよぉ! 気になりますって!」

ソフィアがわざとらしくウンウンと頷く。

「あの二人は……。仲が悪いというか、カービーが一方的にマーベルを嫌ってるだけなんだけどね」

「そうなんですか?」

「カービーはあんな性格だからね。自分たち人間が下に見られるのが気に食わないんだよ」

「でもマーベルさんは別に……」

「そう。マーベルは別に人間を見下していない。見下してんのはオレを襲ってきてる奴らさ」

「じゃあなんでカービーさんは……」

「自分でもどうしようもないんだと思う。同じ精霊として一緒に見てしまっている。そんな自分が、自分でも嫌なんだと思うよ」

「なんか……。複雑なんですね」

ソフィアが複雑な表情で呟いた。出来れば人が人に負の感情をぶつけるのは見たくない。ソフィアは優しい性格をしていた。

「ま。こればかりは時間が解決してくれることを祈るしかないね。……それよりソフィアさん。本当にわかってるの?」

雫が顔をソフィアの顔の近くまでグイッと近づけた。思わずソフィアがたじろぐ。

「な、何がですか……?」

「これからオレたちに関わらないこと。本当に危ないんだから」

ソフィアが残念そうな顔をする。

「わ、わかってますよぉ……。流石に懲りましたって……。……あ、でも」

ソフィアが雫の目を真っ直ぐに見つめる。その綺麗な瞳に、思わず雫はドキッとしてしまった。

「これからもお友達でいてくれますか?」

雫は恥ずかしそうに目を逸らし、頭をポリポリと掻いた。

「まあ……。友達くらいなら……」

ソフィアは駆け出し、数メートル先で振り返った。

「やった! これからも何かあったらまた私に教えてくださいね!」

「それって部分的に関わってるんじゃ……」

ニコニコの笑顔で答えるソフィアを見て苦笑いをする雫。明日からまた質問攻めにされそうな予感を感じていた。


だがソフィアは一つ大切な事を忘れていた。

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