24
その日、塔音学園の寮、ソフィアの部屋にて。
「ああああああ……。どうしましょう……」
ソフィアは一人、ベッドに寝転がりながら頭を抱えていた。風呂から出たばかりなのか、頭にタオルを巻いている。
「すっかり『あの事』を忘れてて、これからもよろしくお願いしますなんて言っちゃいましたけど……。でもでも! セイレイさん関係のことについてはこれからも知りたいですし……」
ソフィアは頭を抱えたままベッドの左右にゴロゴロと何度も転がった。
「このまま黒川君と仲良くすれば、塔音学園での生活も続けられそうですけど……。でも、それだと黒川君を『利用』しているだけですよね……」
ソフィアにはなにか雫たちに話してはいない秘密があるようだった。それについてソフィアは死ぬほど悩んでいた。
「ああ……、私はどうしたら……。せっかくワクワクするような生活が始まるかもしれないのに……」
ソフィアが何度目かわからない寝がえりをうったそのとき。
ピンポーン
「……? 誰か来たんですかね?」
突然ソフィアの部屋のインターホンが鳴った。ソフィアは少し不思議に思いながらベッドから起き上がる。玄関に行く前に部屋に置いてある鏡で人前に出ても大丈夫な格好か確認する。ベッドに転がっていたせいで乱れていた部屋着の裾を整える。
「はいはーい。今出ますよー」
ソフィアは玄関に着くと、不用心にドアを開けた。
「ダメじゃないかソフィア君。まずはモニターで誰が来たか確認しないと」
「あれ。ミッチャン?」
部屋の前にいたのは美智であった。雫の家で会ったときと同じ制服姿のまま、一つ違うのは刀を所持していないことであった。
「いくらお嬢様といっても不用心すぎるよ。怪しい人だったらどうするんだい?」
「あはは……そうですね。気を付けます……。……というかミッチャンも同じじゃないですか」
「怪しい人、ってことかな?」
「いや、そっちじゃなくて……。ところでどうしたんですか突然」
ソフィアは気になって美智に尋ねた。
「とりあえず部屋にあがってもいいかな。ここで立ち話もなんだし」
「あっはい。どうぞ。まだ引っ越したばかりで散らかってますけど」
ソフィアは美智を部屋の中に招き入れた。「お邪魔します」といって美智が靴を脱いで部屋に入った。ソフィアはそのまま奥の部屋に美智を案内する。
「さっきは久しぶりに会えたのにあっさりとしたお別れすぎて気になってね。もう一度ちゃんと話がしたくてさ」
「ああ……。小さい頃に別れてから今日までのお互いの話とかですか?」
「まあそれもあるんだけどね。……君も精霊のことについてもっと知りたいだろう?」
「えっ!? お、教えてくれるんですか?」
前を歩くソフィアが驚いて振り返った。
「うん。ただ、雫君にはナイショだよ?」
「わ、わかりました。内緒で……」
ソフィアはドキドキしながら了承した。雫たちからはこれ以上は聞ける雰囲気ではなさそうだったので、素直に嬉しかった。
「あー、あとそれとね」
「はい?」
美智が少しもったいぶったように、これからイタズラを行おうとしている子供のような表情でニヤリと笑いながら続けた。
「キミの隠している秘密についても、ね」
出会いの章〈ソフィア〉 終
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます