人の行動、思考のイメージ

@usbsjxbsin

私は高速道路を走っていた。

朝に缶チューハイを半分飲んだ酔いが少しだけ残っていていい気分だ。今日は曇り空の少ないハワイのような晴れた日で、春を少し過ぎたあたたかいかぜが窓から頬をうつ。

私は学生の頃からずっと人間を関わることにコンプレックスを抱いていた。私は他の人間よりも、他人のどんな些細な感情でも敏感に感じ取ることができた。嬉しさ、寂しさ、倦怠感、失望、焦りや、怒り。

多くの人が働く中で感じているように、人が働く中で発するのは負の感情が圧倒的に多い。私も学生の頃にはなんとかその理不尽な感情も我慢できていたのが、社会に出て、会社で働く中で負の感情に充てられ過ぎてきた。そうして私は会社を飛び出して、今こうして自分が生まれる前の外国の歌を口ずさみながら南に向かっていた。

海が見えた。今自分がどの辺りを走っているのか見当もつかないから、どの海かなんてわからなかったが、それは穏やかで優しい音がした。それは私に母を思い出させた。母は私に過保護で、私はまだ子供で、2人できずつけあって随分と消耗した。

感じすぎる私を理解できず、それでいて放っても置けない母の心がわかり過ぎて、かといって自分の感情に蓋ができず、多くの暴言をはいた気がする。とゆうのもその頃は私も社会についていくのに必死で自分のこと以外なんて考えられなかったからだ。

母は、今どうしているだろうか。

心をよぎったが、今の私にはそれもすぐに消えてしまった。もう何も感じられないし感じたくないのだ。

高速道路は夜になった。少し目の悪い私には車のバックライトが滲んで見えた。濡れた窓ガラスに映った光のように。

それからしばらく走り続け、私は山口県に入った。もうしばらく寝ていない。サービスエリアに入り、小さな食堂でうどんの食券を買った。空は曇ってきて、今にも雨が降り出しそうだった。そういえば傘を持ってきていない。どこに行くかさえも決めていないのだ。何もほとんど持ってきていなかった。

サービスエリア内のコンビニで傘を買って、外に出たら時には雨はもう降り出していた。私は、車にトランクに積んであった古くて、ガソリンの匂いがする毛布に包まって眠った。春の終わりかけの静かな雨が心地よかった。

気づいた時には外でスズメが鳴いていた。夜通し運転して疲れたトラックの運転手がシートを倒して寝ている。トラックには光旗組というステッカーが貼ってあった。

私は飲み物にお茶を二本と、少しの軽食を買ってサービスエリアから出た。

私はこれからどこに行けばいいのだろう。そしてどうやって暮らしていけばいいのだろう。不安になる気持ちはずっと昔に終わり、今はただ現実的な問題として私の目の前に迫っていた。昔は遠かった将来の重い(少なくとも私には重かった)悩みは、いざ目の前に迫ると現実味を失い、本当に自分で考えていることなのか、それは本当に自分にとっての悩みなのか、私はただ、世の中を雲のように覆っている多くの人にとっての普遍的な問題をずっと自分だけのこととして深刻に考えているだけなのではないか、と私をなんますます深いところへとさらっていく。

時々ウサギを追いかけているイメージが浮かぶ。水面にウサギが飛び跳ねていく。ウサギは何かから逃げるように不規則に飛び跳ねていく。誰かがそれそ捕まえろ、と私に言う。でも私は思う。“どうやって水面を跳ねるウサギを追いかければ？” でも他の人たちはの疑問もなくカヌーやボートに乗って一心にウサギを追いかけて始める。私にはボートがないので、泳いで行こうとするが、うまく泳げない。水が体に染み込んで重くなっていく。沈んでいく。見上げた水面にはなんの疑問もなくカヌーやボートが通り、その白い泡を私は見ている。水の底は暗い。

起きがけには弱かった雨が次第に強くなってきた。ワイパーの動きを早くして私は前の車の滲んだ光を見つめていた。

死んだっていいのだ。それこそよくある高速道路での事故。雨でスリップしたトラックに運悪く追突されて、即死。そこに痛みはなく、あるのは一瞬の驚き。次の瞬間にはポン、とこの世から消えている。

山口県から九州に入り、熊本県に着く頃にはもうあたりは暗くなっていた。雨はまだあがっていない。私は一旦高速道路を降りることにした。運転が長く続き、体があちこち痛い。駅前で適当なビジネスホテルを見つけ、偽名と適当な住所でチェックインした。コンビニで買ってきたビールを二本飲んで、テレビニュースを見た。地方の番組はどこも同じように、平和なニュースが流れていた。

桜が散って、青々とした葉が茂ってきました！お花見シーズンも終わりこれから来る夏の訪れを......いやぁ桜というものは儚いですねぇ...きたる夏に備え........それでは.....スです......本日........