憂希の恥ずかしさ

恵憂とキスをして、恵憂は逃げるように2階の自分の部屋に戻ってしまった。その恵憂の部屋はかつて一緒に生活していたときと同じ場所で、俺の部屋もかつてと同じ場所だった。懐かしいとさえ感じる。

 荷解きもしなければいけないけど、それより恵憂のことが気になって仕方ない。

 懐かしの対面とはいえ、いきなりキスで始まる兄妹ってすごくね?

 

 いや、正直俺も恥ずかしいよ。でもこういうのって男から打開しないといけないんでしょ?


 深呼吸を繰り返して。さあ、恵憂の部屋の扉をコンコンとノックする。ドアが少しだけ開かれる。まあ女の子だし、あんまり部屋は見られたくないんだろう。少しだけ目が合う。

「ごめんなさい」

 1言でドアが閉められた。心が折れそうだ。嫌われたかなぁ?

 

 お義母さんの考えでは家族は一緒に食事をする、という考えだ。もちろん予定があったりすれば作り置きしてくれる。

 そして今日は、家族が1人増えるということで、必ず全員で食事と厳命されている。19時にはご飯と聞いていたので、その時間にリビングに行くとお肉から魚まで、そして炊き込みご飯と。めっちゃ豪華な料理が並んでいた。並んでいたのだが、恵憂が来ない。5分、10分、どんどんお義母さんの機嫌が悪くなっていく。

 あっこれだめなやつだ。お義母さんがドスドスと足音を起てながら階段を登っていく。まぁさっきの感じだと恵憂もここに出てきづらいのだろう。

 どんな話になったのかはわからないが、お義母さんは恵憂を部屋から出すのを諦めて、2人での食事となった。

「ねえ憂希くん。私のことをお義母さんって呼ぶのやめない?」

「なんで?」

 危うく「なんでですか?」って敬語使いそうになった。使ったらまたデコピンだろうなぁ。

「いい年こいて「お義母さん」はないでしょう」

「たしかに。でも事実お義母さんなわけだし」

「漢字にしたら違うけど、呼び方は同じよ?」

「じゃあなんて呼んでほしい? 普通引き取った子供には「お母さん」って呼んでほしいんだと想ってたけど。じゃあ「母さん」にするよ。やっぱり血は繋がってなくても母親だからね」

「嬉しいこと言ってくれるじゃん」

 って言いながら頭をくしゃくしゃされた。


 なんて会話をしながら美味しい(お世辞じゃない)ご飯を食べていると、そろーりと恵憂がリビングに顔を出した。俺と目は合わせられないらしいが、俺の隣の椅子に腰掛ける。それだけで母さんは嬉しかったらしく、さっき俺にやったみたいに恵憂の髪の毛をくしゃくしゃした。恥ずかしいのは恵憂だけではないのだが。

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