涙に理由なんて必要ないんだよ
ふと、寒さで目が覚めた。春は意外と冷える。毛布をかけてもう一度寝ることはできたけど、なぜか水が飲みたくてキッチンに入ろうとして気がついた。
お義父さんが怒っている。こっそり中を見ると怒られていたのは兄だった。
会話だって(というか怒鳴り声)聞こえてくる
「年頃の妹に優しくしてない」
「目が妹をみる目じゃない」
「もっと家の空気を変えろ」
その他延々と兄の叱責を怒鳴っている。
あれ? 嬉しいことじゃないの? クソ兄貴が怒られてる。気分爽快。
とは思えなかった。
だって兄は私をかばっていた。涙を流しながら自分が如何にできていないか、妹の気持ちを慮れてないか。妹は悪くない。不出来な自分のせいで家の空気が重くなっていると。
今でも覚えている。その時湧いた感情は”怒り”だった。大人の都合で始めた生活で、うまくできる方が異常なのだ。そして私はすべてを拒絶した。
だから兄が怒られる。うまくいっていない理由をすべて兄に押し付ける。
そんなの間違ってる。子供を育てる人間の考えではないのだ。
でも子供にできることはない。
両親の話し合いのすえ、兄はお義父さんと、私はお母さんにひきとられる事になった。
そして一軒家はお母さんのものになった。
その日、私は兄のことを初めて「お兄ちゃん」って呼んで、お兄ちゃんは泣きながら抱きしめてくれた。
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