Let me be ME

オノマトペとぺ

第1話


わたしには国がない

国籍は当然持っているし、一定期間暮らしてきた国もいくつかある

それでも心から、「ここがわたしの母国だ」と

そう言える場所がない



多様性の時代であるらしい

それはわたしにとって喜ばしいことなのだろう

多様性の時代では

性別や国籍や人種で、人々を括り分類することを良しとしないらしい

それは馬鹿げたことなのだという


そんな時代なら、

わたしのように国をもてない者でも安らかに暮らせるのだろう



実際のところをみてみよう

未だに書類には性別を選択する欄はあるし、

何処からきた誰なのかを尋ねられる

身分を証明するために、

そういった情報が必要なのだという


それもそうだろう

何者であるのか、

つまり何者危険ではないのか



自分の国というもの

自分の属するコミュニティーというもの

そういった居場所の安全を守るために

訪れた諸々のことを知りたいし、管理したい


至極当然の現象だろう

だけれど、

そんな大切な情報が


男であるか、女であるか

外から来たのか、中にいたのか

そんな大雑把な区切りでいいのか


あいつは「こっち」、そいつは「あっち」

その程度の分類でいいのか



多様性の時代なのだ

人々は気づいた

枠組みの愚かさに

同時にその重さに


選択肢は増え

不自然さは減る

あらゆること、あらゆる者が

存在を認められるだろう



でも、許容度はどうだろう

多様な選択肢を支える方法はあるのか

多様な可能性を否定する層は消えたのか


心の奥底で

自分の正しさが、全体の正しさだと

そんな風に思う者はいなくなったのか



許してほしい

それだけなんだ

自分が何処の誰でもないこと

自分がどちらかに振り分けられないこと


曖昧で、でも自分にとっては一番自然な

そんなわたしを許してほしい

形の上でも、意識の中でも


許容してほしい

自然なあなたと同じだけ

自然な存在なんだと


きっとただ

それだけなんだ


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