のんちゃん、あのね
矢島好喜
のんちゃん、あのね
のんちゃん、あのね
あの日から僕は、探し続けてるんだ。
あなたの笑顔に感じた喜びも。
あなたに論破された怒りも。
あなたに会えない哀しみも。
あなたが傍に居る空気も。
今はもう何一つ、感じることが出来なくなってしまったから。
あなたは僕の神様だった。
正しいものは正しい、間違っているものは間違っている。
立場や状況による、だなんて玉虫色の回答しかしなかった僕に、正義は絶対的な概念として存在すると教えてくれた。
それは文化や環境に創られた思想ではなく、時代や風潮によって揺るがされることのない、確固たる人間の軸なんだと、僕のシナプスに埋め込んだんだ。
覚えているかな。
評論家やコメンテーターを非難し、そこまで言うなら自分でやれと言った僕に、「じゃああなたがやりなよ」と冷や水をぶっかけたことを。
自分の環境を言い訳にし続けた僕に、「あなたはいい人だから、正しくはなれないね」と薄っぺらいプライドを叩き潰してくれたことを。
現実の檻に閉じ込められた僕を、そっと理想の扉を開けて連れ出してくれたことを。
あの頃の僕はなんでもできた。
あの頃の僕はヒーローだった。
それが、あなたが答えをくれていたからだと気づいたのは、あなたがいなくなってからだった。
あの日から僕は、探し続けている。
正解ではなく正義を。
回答ではなく解決を。
論理ではなく真理を。
のんちゃん、あのね。
あなたに伝えたい言葉があるんだ。
いつかどこかでまた出会えたなら。
少しだけ、話してもいいかな。
のんちゃん、あのね 矢島好喜 @kaito_blackcat
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