擦れ違い

樗木 なた

はじまり


    ーはじまりー


あぁ、夏だ。夏だ夏だ。

鬱陶しいくらいに暑い。

汗がベタつくのが嫌だ。

燦々と照りつける太陽も嫌だ。

そもそも夏が嫌だ。

こんな日に出掛ける奴の気が知れないな、と

気付いたら窓から差す陽射しに殺意を覚えていた。泣き止まないのは蝉達の人生最期の精一杯の叫び。死ぬ間際まで心の内を叫べるなんてどれだけ幸せな人生なんだろう。

目を瞑る。夢を見る。

回顧の年を催させる夢を。

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