第6話

「ふー。 びっくりしたなあ…もう」

「ごめんね」

「ううん、いいのいいの。ヒナが悪いことなんて何もないんだから」


 いつもの私たち。

 私はヒナのために力を振るう。


「本当に悪いことしてたり、襲われる理由があるのならそりゃ仕方のないことだけだけどさ。 ヒナはそんなことしていない。 今はフリーだし、FHに名前があるだけじゃん」


 何でもない風に言い放つ。


「うん、ありがとう」


 でもそれは、何かがあればこの関係は終わるという裏返しであって。

 私は、その日が来ないことを願うしかないのだった。


「ねえ、チカ」

「ん?」

「私、理由ができるかもしれない」

「……、聞いてもいい?」

「ずっと預かってる子がいるのは話したよね」

「うん、ミーシェちゃんでしょ」

「そう、元々いたセルでの実験に使われてた子で、少し、最近周囲に動きがある、ように思う」

「それは、…FHのごたごたがありそうって?」

「うん、そう…」

「そっかぁ」


 少しの沈黙。

 寒くなってきた風から私たちを守る様に、柔らかく暖かな日差しが包み込む。


「これは、私たちの問題だから」


 決心したようにヒナが紡ぎ出す。


「うん」


 彼女の顔を見て、私はゆっくりと頷く。


「全部が終わったら、みんなでパーティでもしよっか」

「ん、いいかも」


 クスリと笑い合う。

 

 私たちは、友達だ。


 END

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