第4話 真夜中のプラットホーム
真夜中のプラットホーム
迷い込んだ夜の道
その年、私は高校生になった。
中学二年生の時から中学校を卒業するまで不登校だった私は、電車で一時間半掛かる都外の高校を選んだ。
ここまで来れば、知り合いに会う事はないと思ったから。
バドミントン部に入った私は、当然毎日遅くまで練習に追われていた。部活が終わるのが六時、そこから片付けだったり着替えだったりで学校を出られるのは六時半過ぎ。家に着くのはいつも八時を回る。
そしてその日は友達と学校近くのカラオケに行き、解散する頃は十時近かった。
やばい、お母さんに叱られる〜。
中学時代友達と遊ぶ事がほぼなかった私にとって、学校帰りに友達とカラオケに行く事はとても新鮮だった為、叱られる事への恐怖はそこまで大きくないし大して慌てていなかった。
街頭の光が、眩しい。
私、今、とっても「充実」してるんだわ!
お祭り気分で歩いていると、気が付くといつもと違う道を歩いていた。
薄暗い夜道を照らすのは、立ち並ぶ店達。
ここは商店街だろうか。
こんな夜遅くまで営業してるなんて珍しいと思い、私は八百屋で好物のリンゴを買う事にした。
「毎度あり。」
店主のおじさんが笑顔でレシートを渡してくれた。私はまた嬉しくなった。
いいとこ見付けた。また来よう。
商店街を抜けると、いつもの駅に続く道へ出た。
街灯が一定の感覚を保ちながら並んでいる。その光を頼りに駅に向かう。もう古いのか、その光は弱々しく点滅している。
歩く度に袋の中のリンゴがごそりと動く。あれ、私、いくつ買ったんだっけ。袋を広げて中を確認すると、リンゴは四つ入っていた。
明日のお弁当に入れてもらお!
信号が赤になったので、横断歩道の前で立ち止まる。一回赤になると、ここの信号長いんだよなぁ。
あれ、そう言えば。さっき送ったメッセージ、WiFi重かったから、あの子にちゃんと届いたかな。ポケットからスマホを取り出して確認すると、ちゃんと送信されていた。
信号が、青になった。
信号を渡ると、一気に人通りが多くなる。スーツを着た社会人。背中を丸めたお年寄り。髪を明るく染めた高校生。お酒に酔った大学生。
何故か私の心臓は踊り出す。
『&♡◆◎☆?〃♭∞!』
『*◎△■+♪#?』
『Aらd7nn9d●xぅん!!』
あ、、レ?
☽ ⋆゜
すれ違う人達が、自分を見ている気がする。
すれ違う人と肩がぶつかりそうになった。舌打ちをされたような気がする。
私の事なんか見てないはずなのに、こっちを見てる気がする。
目の前を、同い年くらいの女子学生二人が通り過ぎる。目を合わせないようにさっと下を向く私。
「ねえ……」
それしか聞き取れなかったけど、私とすれ違った途端話題を変えた気がした。
私の、話を、しているの?
冷や汗が背中を伝う。
私、やっぱりだめなの?
さっきまであんなに楽しかったのに。高校生活だってそれなりに充実してたのに!
クラスメイトの目を見て話せるようになったのに。誰も知らない場所まで来てるのに!
追いかける二つのライト
最後に笑ったのは誰
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