ミスコン 後編
「えー、それでは気を取り直して、次の方どうぞ」
次に出てきたのはメイド服を着た褐色の肌に緑の瞳、日本人よりも堀の深い顔立ちの少女。まぁ、この学校に秋も深まったこの時期に褐色の肌をした女性は少ない。
更に緑の瞳に文化祭の間にメイド服を着てるとなれば一人だけ、空であった。
「は、はひ! は、はじめまして、こんにちは、えっと、一年生の安住空です! えっと友達が勝手にミスコンに応募しちゃって……その、よろしくお願いします」
「今年は他薦が多いな、それでは、アピールのほどをどうぞ」
「え、えっと、ど、どうすればいいでしょう」
「何か特技とかを披露でもいいですよ」
「えっと……私のクラス、メイドさん姿で焼きそば売ってます来てくれたら焼きそば大盛サービスします!」
「アピールじゃなくて宣伝じゃないか、まぁいいか、ありがとうございました、次で最後ですね」
空のアピールもとい宣伝に少し会場の男子生徒が残念にしてる所に最後の一人である真心がやってくると思いきや。
「やです! やっぱりでません!」
「そんなこと言わずに、皆待ってるから」
「痛い! 引っ張らないでくださいよぉ!」
「百合野、そうやって好きな奴には押しが強いから距離を置かれるんじゃないか?」
「あ、関羽、マイク貸して、ここからは私が変わるから」
「関右だ、ほらよ」
凛子に手を引かれながら無理矢理ステージの上に引きずり出される。
会場の女子は凛子の姿を見て、可愛いと褒めているが、当の本人はステージに出されてからは顔を赤くして俯いてるだけである。
「えーこの子が私が皆に署名を集めて貰ってミスコンに出て貰った、安達真心ちゃん一年生よ、ちなみに服とメイクは私プロデュース、っさ、顔を上げて」
「や」
凛子は真心に顔を上げて貰おうと努めて優しい声音で声をかけるも、真心は小さな声で拒絶するだけだ。
「恥ずかしがる真心ちゃんも可愛い!」
が、凛子には効かない、その姿もまた凛子からしたら可愛いもので抱き着かれる。
真心は抱き着かれると暴れ出し、凛子を引っぺがそうとするが、真心の膂力じゃ剥がす事は出来ず、ステージの上で猫可愛がりされるだけなのであった。
そんな姿に会場の生徒達も真心の小動物的可愛さにやられるのであった。
「さ・て・と、真心ちゃんの可愛さもわかってもらった所で投票に移って貰います、関羽、私は下がるから説明頼むわね」
「だから関右だっての、たくよぉ、さて投票ですが、この後ステージに出場者の名前が書かれた投票箱4つと集計係の文化祭実行委員が立ち会います。そこにこの会場に入る際に頂いたであろうプレートを自分の選んだ女性の名前の書かれた箱にお入れください、制限時間は文化祭終了まで、ミスに選ばれた方は文化祭の閉会時に壇上にて表彰されます、それでは開始致します」
真心を壇上で可愛がり尽くした後のステージを関右にパス、自分勝手な奴だと凛子を一瞥しながら司会進行は真面目にこなすところ、彼の人間性が至極真面目な者だと伺える、そんな関右は淡々とミスコンの進行を行う、投票が始まると同時に会場の観客がステージに一人また一人と昇る。
「もう、脱いでいいですか?」
「あら、表彰台に立つまではそのままよ」
「空ちゃんや菖蒲先輩、それかもう一人の人かもしれないじゃないですか」
「そうかもしれないわね、でもそうじゃないかもしれない、折角だしその姿で会場を回りましょ」
「い~や~で~す~」
そんな投票の横では袖に戻った真心は服を脱ぎたがるが凛子はそれをさせまいとその手を引きその姿のまま残りの文化祭の時間を過ごさざるを得なかったのだった。
やがて楽しい時間はその時を終えるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます