ご馳走と女神のご褒美

「このぎゅうにくとやらは美味いでござる!」

「こっちのにほんしゅってやつもまじうめぇっすよ」

「遠慮はいらないドンドン食べておくれよ、次も煮込むぞー」

「「ウェーイ!!!」」


 あの名目上は鳥羽だが実質泥助とのダンジョンバトルを終えてから数日後。

なんやかんやで泥助は投獄され、今日はそのお祝いの宴会の為に安住城の広間の一つに面々は集まり二つの机に別れ各々すき焼きをしていた。

虎徹、デュラハン、真路は自分たちのコップに真路が持って来た日本酒を水でも飲むかのように傾け、未成年&飲酒しない組は別に固まって鍋をつつきあっていた。


「菖蒲様、吾輩の畑の白菜をどうぞなのニャ」

「ありがとうございます、シャルル」

「真心様、空様、牛肉が食べごろで御座います、どうぞお食べください」

「ありがとね、シスタ、う~ん、まさか鳥羽さんが牧場主さんだったなんてねー」

「本当にね、あ、凄く美味しい、でも急にすき焼き食べようだなんてびっくりだよ」

「いやだって、キロで来たんだよ、皆でなきゃ食べきれないって」


 そんな風に話していたら、部屋の空間が一部歪みそこから今日はスーツ姿をした女神様が顔を出す。


「美味しいモノ食べてるわねー、いいなー」

「あ、女神様こんばんはー、あ、食べます? お酒も飲むなら向こうの席ですよ」

「あら、お酒もあるの、それじゃそっちに入っていいかしら?」

「むむ? 顔は知らぬが一緒に呑むでござるよ」

「呑むっす呑むっす、一緒に酒飲めば友達っす」

「あ、どうぞどうぞ、まずは一杯」

「いやー、ありがとうございます、うーん、やっぱお酒ってサイコー」


 あっさりと輪の中に混じっていき、お酒を貰いはしゃぎ始める女神。

俗な女神もいた物である。さて、皆ですき焼きを食べ終わると。

女神さまが真心に近づき、頭を下げて感謝の台詞を述べる。


「今回は私のお友達の神様の手助けありがとうね、神様は一般人に手を出せないのが決まりだから本当に助かったわ」

「いえいえ~」

「という訳でそのお礼を用意してきました、箱根の老舗旅館の優待券8月終わりまでの期限付きだけど温泉旅館よ、これ一枚で2泊までおっけい」

「おお~! 旅行券、あ、でもうち旅行はなぁ」

「……夏は無理だねぇ」

「あら、どうしてかしら?」

「盗難専門刑事の三課にとって夏は戦いだからね、休みどころじゃない」


 夏になると、学生の度胸試しや受験のストレス発散による万引き行為。

旅行客を狙ったスリや置き引き、旅行に出る家への空き巣などが多発する。

それに忙殺されるが為に、安達家は家族旅行とは無縁、真心も旅行経験は皆無だ。

学校の行事で数回はあるのではと思うが、色々とタイミングや事情が重なりその手のイベントは未経験だったりする。女神もこれにはちょっと失敗という顔をする。


「あっちゃぁ~、なんかごめんね?」

「でもまぁ、真心さんも高校生だし大丈夫だろう、誰か誘って行ったらどうかな?」

「いいの? 空ちゃん大丈夫だったりする? 菖蒲先輩も大丈夫でしたら」

「そうですね、父と母に聞かなければですが、おおむね大丈夫なはずです」

「私の所も真心ちゃんが一緒なら大丈夫って言ってくれるはずだよ」


 こうして、女神からのご褒美で真心の初旅行計画が始まる、菖蒲や空も親からの許可を取ってからだが、おおむね大丈夫なはずと心地よい返事を帰してくれる。

もう数週間後には真心にとっては楽しい楽しい夏休みが。

しかし、真路にとっては苦しい苦しい夏休みが始まるのであった。





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