第四章 父親とデュラハン

夏休みはもうすぐ

 7月に入り、すぐの期末テストが終わった翌日、いつものように真心、空、菖蒲は美術室に集まり、美術部の活動をしていた、全員で期末テストに入る前の6月に作った紙粘土の作品が乾いたのでそれに色を塗っていた。


「……じゃじゃーん、エルザー、中々可愛く出来たね」

「やっぱりセンスあるよね真心ちゃん、私はえっと林檎」

「シンプルで良く出来てると思いますよ、私はシャルルを作りました」

「ケットシーの名前ですよね、何か意味などは?」

「ヨーロッパの民話、長靴をはいた猫を書いた人の名前です」

「ほへー、知らなかった」

「こんにちは、随分可愛い物作ってるわね、紙粘土?」

「あ、凛子さん、こんにちはー」

「あら? 生徒会長様、こんにちは美術部に何かご用事でしょうか?」

「真心さんがいつでも遊びにきてくださいって言ってくれてね、ここ失礼するわね」

「あ、どうぞ、でもいつの間に知り合ったの、真心ちゃん?」

「この前のダンジョンバトルだよ、言わなかったっけ?」

「「聞いてないよ(です)」」


 真心が作ったのはエルザ、これが中々の出来栄えで隣に並べても遜色無さそうな出来だ、空が作ったのは林檎、複雑な形状を嫌った結果出来たものである。

そして菖蒲が作ったのはステッキを持ちシルクハットをかぶり長靴をはいた猫、現在は菖蒲が命名して今はシャルルと名乗るケットシーがそこには立っていた

 

 そんな和やかな美術室の一室に以前に真心とダンジョンバトルをして負けた、百合野凛子が真心の言った言葉通り美術部に遊びに来たのだ、三人が作った物を見てから

自然に真心と空の間に入り三人の会話に入り込んでくる。空も菖蒲もダンジョンバトルの日は用事があり、事の顛末を終わった後に聞いただけで相手が誰かは聞いていなかった。


「そろそろ夏休みね、真心さんは何か予定はあるかしら?」

「うーん、海に山に後はどこに行こうかな、小旅行とか?」

「それなら一緒に花火大会はどうかしら?」

「それもいいですねー、夜は怖いけど」

「あら? 大丈夫よ、怖かったらしっかり手を繋いであげるわよ」


 凛子は以前にも見せた妖しげな瞳で真心を見つめる、真心は身の危険を感じ気持ち少しだけ菖蒲の方に椅子を動かしながら話を続ける。


「後はそうだ、ダンジョンも頑張りたいな」

「マモノの種類はそこまで多くなかったわね、真心さん」

「そうですねー、魔力を果物から摂ってるので増え方がゆっくりなんです」

「マモノから還元してもらえばいいんじゃないかしら?」

「還元?」

「あら、あなたの補佐役は教えてくれなかったの?」


 そして次はダンジョンの話題となる、真心の魔力は着々と上がってきてはいるが現在は大体レベル4のマモノが知性を抑えれば2体くらい出せるかなといった魔力しか持っていない。

そこに凛子が還元という物を説明する。


 まあマモノが蓄えている魔力をダンジョントレーナーに還元してもらう物だ。

凛子の場合はサキュバスが男から集めた魔力を還元してもらっていた。

真心ならば、フェアリーやゴブリン、ケットシーが蓄えた魔力を還元してもらえば。

沢山の魔力を得れるだろうと話してくれる。


「ゴブリンやケットシーは魔力が必須の状況ですよね真心さん」

「あちゃー、でもエルザ達フェアリーからなら多少貰っても大丈夫かも」


 さすがに現在、人を増やしてる途中のゴブリンや畑の成長、拡張、収穫に魔力が直結するケットシーなどは魔力を貰うのは難しいと菖蒲に指摘され真心も思うがそれと同時にエルザからならば魔力が貰えるだろうと、帰ったら試そうと今から思いながらこの後は凛子も混じって美術部の活動をのんびりとしてお開きとなった。

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