第二章 親友とゴブリン

今日から高校生!

 春の陽気に恵まれた今日この日、一人の少女が高校生になる。


「おはよう!」

「おや、本当に起きてこれたんだね、朝ご飯出来てるよ」


 少女の名前は安達真心、今年16歳の女子高生である。

この少女、女神に頼まれて実は異世界にダンジョンを作るダンジョントレーナーをしていたりする、今日もそのダンジョンに作った自室から補佐役、彼女の世話をする者に起こしてもらう事で早起きが出来たのである。


「もう高校生だからね! それじゃいってきまーす!」

「あ、お母さんにもいってらっしゃいいってからね、っさ、僕も仕事仕事、今日からは遅くなるから夕飯は冷蔵庫にあるからそれ食べてね」

「わかってるぅー、お母さん、いってきます」


 が、その功績を自分の者だけにするちゃっかりものであった。そして朝ご飯であるトーストを牛乳で流し込み廊下を渡り玄関を勢いよく開き外へと飛び出す。

 その際、真心の父の一言に返しながら、写真立てにいる、小さな真心を抱く真心に似た女性へと挨拶をする、真心の家は父子家庭だったりする。


 さて彼女が通う高校はここから徒歩数分とかなり近くでまだ余裕があるのだが、父の都合と彼女は別に寄るべき場所がある為少し早い時間に出たのである。寄るべき所、それは最寄りの駅であった。


「……あ、空ちゃーん」

「あ、真心ちゃんおはよー、待っててくれたの?」

「うん、今日から一緒の高校だからね!」

「そうだね、同じクラスになれたらいいなー」


 最寄りの駅で待つこと数分、改札を通ってきた少女に声をかけながら駆け寄る。

少女の名前は安住空あずみそらまつ毛の長い堀の深い顔立ち、日本人には珍しい褐色の肌をしており更には緑色の目をした真心にも劣らない美少女である。

 

 空はトルコ人の父と日本人の母を持つハーフである、外見は父から受け継いだ物だ。小学生の頃に真心の通う小学校に転校してきたのだが最初は肌や目の色顔立ちをからかわれるなどされていた、しかし同じ小学校に通っていた真心がそれを許すわけもなく仲裁してから今日まで親友として行動を共にしてきた。


 中学は空の学区が引っ越しで変わってしまい別であったが高校は同じ学校に入ると二人で決め見事合格し、今日の入学式を共にするのであった。


「そうだ、今度家に遊びに来てよ、泊りでさ」

「え、お家の人迷惑じゃないかな?」

「お父さんには話を通しておくからさ、面白い事初めてね、それを見て欲しいの」

「面白い事?」

「詳しい事は見てからのお楽しみ、あ、お蜜柑食べる?」

「なんで蜜柑? でも食べようかな」

「はい、どーぞ、皮は回収するね」


 真心は空にあのダンジョンの事を教えてみようかと思い立つ。

空ならば真心にはない発想をしてくれるかもしれない、所謂三人寄らばという奴だ。

真心はリュックサックから妖精印の蜜柑を二つ取り出し空に手渡し、仲良く食べ歩きながら登校する、空も蜜柑を食べれば美味しいと喜ぶ、真心はその言葉にそうでしょと笑顔で返すのであった。


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