ダンジョンマスターのもう一つの力

「ただいまー」

「おかえりなさいませ、真心様、まず履物の方をどうぞ」

「ありがとね、シスタ」


 夕食の後にお風呂も済ませて真心はダンジョンのある異世界へと戻ってくる。


「ウッドゴーレムはどうかな?」

「既に仕事を終えて今は外で待機させております」

「おっけい、それじゃこの下にダンジョンが広がってるんだね」

「足元も中も真っ暗ですが大丈夫ですか?」

「ふっふっふ、そこは抜かりないよ、じゃじゃーん、LEDランタン!」

「明かりで御座いますね」


 真心は異世界に入る前にある程度の用意をする事にした、その一つがこれだ。

彼女の部屋の押入れの中に眠っていた、ちょっと古いランタンだ。

懐中電灯にもなりかなりの光の量を提供してくれる優れもの。


「それじゃ早速降りよっかー、シスタがこれ持って前歩いてくれる?」

「はい、よろしければお手も繋ぎましょうか?」

「そこまで子供じゃないもん!」

「左様ですか、まずは階段でございますね」


 真心がウッドゴーレムに掘らせたのは洞穴から階段状に3mほどに

右に通路を作り、洞穴から外に出る向きの方向へまた3mほど掘り、そこから

縦、横3.6m高さ2mの部屋を作って貰った。


「つきました、ここが終点でございます」

「うーん、どうにかして床に座りたいな」


 ただ、床は土がむき出しで座れる状態では無かった。


「でしたら、ダンジョンマスターのもう一つの力、モノを作る力はどうでしょう」

「モノを作る力?」

「はい」


 ダンジョンマスターにはマモノを作る以外にもモノを作る力を持っている。

そしてそれはダンジョンマスターの属性によって左右されるとも。

具体的に今の真心が作れるものは木と似た性質を持つ物。

そして水そのものや水源を作ったりできるとシスタは言う。


「ふむ、木に似た性質……植物っていけるかな? だとしたら……畳!」


 真心が畳と叫んだ瞬間、空中に畳が現れ大きな音を立てて畳が床に落ちる。


「おお~、いいね! もう7枚くらい欲しいかなっと」

「あまり使いますと魔力が減るのでご注意を」

「え、どうしよ、マモノ出せなくなっちゃう?」

「大丈夫です、モノを作った魔力は一晩眠れば回復します」

「おっけい、それじゃ次はこの畳を並べていかないと、手伝ってシスタ」

「かしこまりました」


 シスタと真心はせっせと畳を敷き詰めていく、ここに8畳の部屋が出来る。

更に真心は一つちゃぶ台を中央に置き、これで一息つけるといった感じに座った。


「後はお座布団が欲しいかな、とりあえず、今日はここまでまた明日!」

「はい、また明日でございます」


 こうして真心のダンジョンの初日は終わったのであった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る