秋本夢美――①

 もし、お姉ちゃんを死にまで追い込んだ存在がいるのなら、あたしはその人を許すことはできない。


 あんなに優しくて大好きだったお姉ちゃんを苦しめてこの世から消したくせに、名乗りもしないで今も普通に生活していることを想像すると、それだけで頭と胸の奥がチリチリした痛みと熱に満たされそうになってしまう。


「夢美、怖い顔してどうしたの?」


 二時限目の休み時間。


 自分の席に座り眉宇を寄せながら机上を見つめていたあたしの元へ、見慣れた人物が近づき声をかけてきた。


紗由里さゆり……」


 あたしと同じ一年四組。中学校時代からの友人でもある伊藤いとう 紗由里さゆり


 大人しくはなく、かと言って快活でもないけれど、基本的に男女を問わず誰とでも仲良くできるという羨ましい特技を持つ彼女は、珍しく躊躇うような視線をこちらへ向けぎこちなく笑みを浮かべていた。


「朝からずっと様子おかしいから気になってて。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る