秋本夢美――①

 正直、死んだお姉ちゃんを発見したときどうしてあれほど冷静でいられたのか自分でもわからない。


 本当なら、すぐにでも取り乱して下にいたお母さんを呼んだりしててもおかしくなかったのに。


 あのときは、何故か頭の中が何か見えないものにコントロールされていたかのように冷静で、落ち着いていられた。


 だからこそ、あたしは遺書を独り占めすることを簡単に、こうする以外にあり得ないというような感覚で自然に思いついてしまった。


 お姉ちゃんとの特別な関係を一つ、自分の側に残しておきたかったから。


 お姉ちゃんが最後に吐き出した終わりの想いを独り占めしたいという、そんな我がまま。


 もしこれがばれたら、何かしらの罰を受けるのだろうか。


 そんな小さな不安と後ろめたさは抱えているけれど、ばれない自信はある。


 実際、今日までばれていないし、警察にすら見つけられていないのだから。

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