若い衆

「あなたのところの若い衆が来たわ。」


若い衆...タツキチとセイヤのこと...ね。よう子は思った。


正確にいえば、よう子のところの"若い衆"ではない。それと、二人ともよう子より年上であった。よう子を' 姐さん 'と呼んでいるけれど。


「そうでしたか、何かご迷惑をお掛けしていなければ良いですが。」とよう子は言った。


「迷惑ということはないわ。あの人達面白いし。」とその女医、蒼井瑠香あおいるかは言った。


タツキチとセイヤは、この雑居ビルの一室にある"白目高組しろめだかぐみ"というやくざな組織の組員であった。そして、よう子の祖父はかつてその組織の組長だった。


かつて、というのはよう子の祖父は既に亡くなっており、今の組長はよう子とは特に関係のある人物ではなかったのである。


よう子は、ナニがナニしてナニしちまった。というのが何だったのか、聞くのはやめておいた。


蒼井瑠香は「面白い人達ね。」と笑って言って、自分の医院である一室へと戻っていった。



灘よう子は、先ほどの依頼者の女性のことについて思い出そうとした。数年前、確かに彼女の夫であった人物がここへ来たのである。


よう子は書架にある数年前の書類を辿ってみることにした。


応接間には鴨木紗栄子の' 甘い香り 'がまだ残っているような気がした。





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≪登場人物紹介≫

・シロ ・・・ 本当の名をゲンカイ・ナダという。

・クロ ・・・ 本当の名をクロ・ト・ジュノーという。ジュノー王国の王子。

・アオ ・・・ 本当の名をアポトーシス・オルガという。〈死神〉と呼ばれることがある。

・灘よう子 ・・・ 東京で探偵をやっている。

・鴨木紗栄子 ・・・ 灘よう子に仕事を依頼する。

・蒼井瑠香 ・・・ 医者。



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