序(2) 《東京の落とし穴》

蛇からの忠告

《 にょろ、にょろにょろにょろにょろ。 》



- 出会った頃、ああこの人は家族なんだと思ったの。


- 不器用そうな太い指も、体毛の無い筋肉質な太い足も、私はあなたのすべてを愛おしいと思ったわ。



《 そのビルを過ぎると、落とし穴があるにょろ。気をつけるにょろ。 》


《 その角を曲がると、夫婦がケンカをしているけれど、本当は仲良いにょろ。気をつけるにょろ。 》



- 私はあなたの事を好きだった。やたら大きな体のくせにちっとも日に焼けてなく、綺麗な体だった。


- あなたは強引にキスをした。私はあなたを好きだったけれど、拒んだわ。


- 短い髪、私を強く求める表情。私の唇に触れるあなたの唇、想像したよりもずっと柔らかかった。



- その初めての夜も、あの日の夜も、そしてこの夜も、1つ1つは特別の夜だったし、ひとつながりの日常の夜でもあったわ。


- 朝が近づいてきて、夜は、特別な夜は、日常の夜も、すこしづつ失われていったの。



- あなたは私に背を向ける。失われた時間は戻らない。



- ところであなたは何故、背中に を着ているの?

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