「うるせえな。のぞくんじゃねぇよ」

「うるせえな。のぞくんじゃねぇよ」

「あっはー。画面見られたくねーのか」

「お前みたいなごくつぶしのおっさんに見られたいヤツなんかいねーよ」

「ちっ。しょうがねえな」


男はごろりと古いソファの上に寝そべった。


「45行目のコロンの後ろに中括弧入れな」

「えっ?」


少女は怪訝な顔をした。


「そんで無名関数を置いて、そこに処理を移すんだな」


少女はあっけにとられていたが、やがて画面をのぞきこんだ。


「45行目……?」

「コロンの後ろに中括弧。そん中に無名関数」

「……動いた……」


少女が驚いて振り返った。


「あんたプログラミングできんのかよ!」

「ホームレスがプログラミングできんのが意外か? おっさんはいろいろ経験してきてんだよ」


少女は勢いよく立ち上がると、男の前に立った。


「なんだ?」

「あの……」

「ん?」

「プログラミング、教えてくれよ」

「お前にか?」


男は苦笑した。


「画面見られんのもイヤだって言ったじゃねーか」

「それは! その……謝るよ」

「殊勝なこったな」

「あの……教えてくれたら、食事、作ってくるよ」

「食事?」

「弁当でいいだろ」

「作れんのか」

「ば、バカにすんな! 女子高生が弁当作れんのが意外かよ! あたしだって、弁当くらい作れるよ。教えてくれるんなら」

「プログラミングの授業の代金に女子高生の手弁当か……悪くないな」


男は言った。


「何から始めるんだ?」

「いいのか?」

「そりゃ、暇なんだからな」

「じゃ、このプログラム見てくれよ」

「まず設計資料からだな……」

「ないよ」

「じゃあ作るんだ」

「俺一人で作るのに要らねえよ!」

「だからいろいろうまくいかねえんだよ。ちゃんと資料にして整理しろ」

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