第60話【童話・池のぬし】

 むかしむかしあるやまのふもとに小さなむらがありました。


 そのむらのはずれにおばあさんが1人でんでおりました。


 むらの子どもたちはそのおばあさんをこわがっていました。


 子どもたちがわるさをしたときにおやたちは、おばあさんのうちれていく、そしてとてもこわいおばあさんだから、ひどい目にあうというのです。


 ですから、子どもたちはなるべくわるいことをしないように気をつけておりました。


 ですが、おさない子どもたちのことです。多少たしょうはいたずらもします


いどにいしげ入れたり

 っているにわとりをおいいかけまわしたり、だれかのはきものをとおくにかくしたり。


 おとこの子たちはそうやっておおきくなっていくものです。


 ある日のこと

 そのむらにはおおきないけがあるのですが、そこにやってきたのは弥助やすけという7つの男の子と重吉しげきちという8つの男の子でした。


 そのいけにはいけぬしといわれる大なまずがいるときいておりました。


 そんなことが好きな男の子たちです


 見ればいけそこがみえるほどでございましたし

 あついあついなつの日のことです

 ふたりはいでとうとういけに入ってしまいました。


 夢中むちゅうになって大なまずをさがしていましたら、とつぜんみたこともないほど大きな大きななまずが2人の足元あしもとにやってきました。

 このいけのぬしです


 大きななまずにびっくりして弥助やすけいけあたまから入ってしまいました。


 あさいとはいえ弥助やすけは泳げません


 いけにはたくさんのがただよっています


 重吉しげきちたすけようとしましたがそのあいだを邪魔じゃまするように大なまずはくるくるとまわっていました


 ここはむらはずれです、大人おとなは近くにはいません


「やすけ━━━!」

 ちからのかぎさけびました。


 そのとたん池のこうがわからおばあさんがやって来ました


 おばあさんはこちらがわまでくるといけに入りました、あいかわらず大なまずはおばあさんさえいけさそおうとくるくるとおばあさんのまわりをまわっていました


 おばあさんはおきょうのようなおまじないのようなことばをなんどもなんどもとなえました。


 そしていけの中の弥助やすけをさがしました。


 しばらくするとおばあさんは弥助やすけをだきかかえていけからあがってきました。


 そしてぐったりとした弥助やすけにさっきとはちがうことばをなんどもとなえました、やがて弥助やすけは口からたくさんの水をはいて目をあけました


 重吉しげきちきながらよろこびました


 おばあさんはやさしいこえでいいましたおとうやおかあのいうことをきくんだよ、そしていけにはぜったいに入ってはいけないよ


ふたりは大きなこえでへんじをしました


 村にかえってそのはなしをしましたがだれもしんじてはくれませんでした

 ですが

 ふたりはちゃんとおぼえています


 おばあさんのことも

 おばあさんがいったことばも


 やがてふたりは子をつ大人になりました


 ふたりは子どもたちになんどもつたえましたいけにぜったいに入ってはいけないこと


 むらはずれにはやさしいおばあさんがいたこと、そしていまも子どもたちを見守みまもっているだろうということを


 ~おしまい~

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