第34話【ミルクティー】

 私らしく生きるって何だろう?

 君はそのままでいいって…

 なんて別れの言葉を残すんだよ、それってズルいよズルすぎるよこうすけ


 1年間の私しか知らないくせにその言葉を残して彼は私の世界から消えた。

 正確には同じ大学に通ってるから会えるのだけど、なるべく会わないように授業を受けている。


 友達には心配かけたくないから元気に振る舞ってるけど、かなり無理しちゃってる。


「広輔ってさ休学するんだってよ」

 理沙からLINEのメッセージが届いた。

 もちろん二人が別れたことを知ってるし、内心では凄く驚いたけど。

「そうなんだ、何かやりたいことがあるのかな」と返信コメントを書いてスマホの画面を閉じた。


 頭の中でぐるぐると彼との事を思い出していた。

 初めてのデートのこと、優しくキスのこと、女としての喜びを教えてくれたことも…

 悔しい位に好きにさせてくれた人だったんだ。


 その日は学校に行くのをやめてベッドに潜りこんだ、LINEの通知が入ったけど読む気になれなかった。


 眠ってしまえば忘れてしまえると思ってたけど私は彼の夢をみていた。

 あの頃のように抱きしめられる夢だった。


 泣きながら目を覚まして壁の時計を見たら6時になっていた。冬の夜は悲しくなるくらいに早く闇を運んで来る。


 カーテンを引いたままだったから時間が過ぎてることに気づかなかったけど、心に寄り添うような綺麗な半分だけの月の明かりが私を照らした。


 その時に理沙が私の部屋のベルを鳴らした。


すみなにやってんのよ、心配させないでよ!何度メッセージ送ったかわかってんの?」

 玄関先で怒ってる理沙に謝りながら部屋に迎え入れた

 理沙は私の唯一の親友だ、そしてコミュ障の私をたくさん外に連れ出してくれた。

 いつものようにソファーに腰掛けながら静かに話し始めた。


「広輔…病気なんだって…」



 理沙は広輔の部屋に駆け込んで別れた理由を問い詰めたらしい。


 そして彼は白状した…

 その病は命にかかわるもので、好きな女の子を泣かせたくないから別れを告げたと…


 その言葉を聞いて涙が溢れた。

 そして涙は止まらなくなった。



「香澄のことがたまらなく好きなんだって…でもこれからの治療は壮絶になるし、自分の姿さえ変わっていくだろうしその姿を見せるのが辛いって…泣きそうになってたよ……」


 理沙は香澄を強く抱きしめた。

「もうすぐしたら広輔がここに来るから、もう一度会ってしっかり自分の気持ち伝えなよ!あれだけ脅したからきっと来るはずだから」

 悪戯っぽく笑った理沙はきっとこれからも私の親友だ、きっとこれからも私を支えてくれるし、私も支えたい。


「はい、これ差し入れね」コンビニの袋には私と広輔が好きなミルクティーのペットボトルが2本入っていた。


 理沙が帰ってからしばらくしてから、ドアのベルが鳴った。


 私はこの気持ちをちゃんと伝えよう、二人で乗り越えようと伝えよう。


 香澄はドアを開けた広輔の身体に飛び込んだ、そして広輔はその愛しい肩を強く抱きしめた。


✬✬✬

綺麗な半分だけのお月さまを眺めながら…「これでいいんだ…大好きな二人が幸せになれたら……それでいいんだ…」


そう呟く理沙の気持ちもあの月に届くといいな……

新しい恋もきっともうすぐ…



✣あとがき✣

栞屋ことさんのエッセイの「午後の紅茶」に引っ張られて少し加えましたし題名も…ふふふ。

そして私の好みは…

ミルクティー≫ストレートティー≫メロン(レモン)ティー≫

( ̄▼ ̄*)です!


読んで頂きありがとうございます。

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