《ボイナとの修行:2》
ボイナから魔法を教えて貰うようになってから1ヶ月。俺達はずっと森の中心にいる。
「さて、今日も我との実戦での勝負じゃ。」
ボイナが使える魔法の呪文を聞いてから1ヶ月。まずは攻撃魔法から教えて貰っていた。とにかく、魔法になれる為、使いまくる日々。
最初、魔法を教えてくれる際、
「さて、我が知っている魔法を全部教えたわけじゃが約束して欲しいのじゃ。我が良いと言うまで攻撃魔法は上級以上は使わないと。」
そんな事を言ってきた。俺が何で?と聞くと、
「うむ。まずは、魔法の危険性を十分に知って欲しいのじゃ。お主は魔法を使うのを楽しみにしてしておる。じゃが、危険性を知らないで使ったらミスをすれば死ぬことになる。じゃから、まずは初級と中級から教えていくのじゃ。まずは我が説明をしながら使ってみるから良く見ておくのじゃ!」
そう言って魔法を使う。
俺はボイナの言葉を理解してなかった。この世界の人は魔法を使っている。なのに危険ってどういう事だ?と思っていた。実際、まず見せてくれた初級攻撃魔法は大した事はなかった。
威力をあげても先に見せてくれた、"
初級攻撃魔法を見ていた俺は早く自分も使いたい!と思っていた。
でも次に見せてくれた中級攻撃魔法を見て、すぐに考えが変わった。見せてくれた中級攻撃魔法は見た目が似た魔法でも、威力が段違いだった。
分かりやすいのは、"
"
同じ大きさの火の球なのに威力が全然違う。他の魔法も似たような威力だ。中級でこれなら上級は?ましてや超級なんて。
ボイナが言った魔法の危険性がわかった。
もし、ボイナが禁止しなかったら俺は試しに上級や超級を使ったと思う。きっと想像もつかないような威力だろう。
ボイナが魔法を見ていた俺に聞いてくる。
「どうじゃった?今見せたのが中級攻撃魔法じゃ。何を思った?」
そう聞いてくるボイナの目は真剣だ。人の姿だが、その赤い瞳は俺を真っ直ぐ見ている。
「怖い。もし、自分に向かって同じ魔法が飛んで来ると思うと怖くて堪らない。」
だから、俺は正直に答えた。すると、
「ふむ。魔法の危険性は分かったようじゃな。だが、怖いからと言ってどうする?使うのをやめるか?お主は目的があるのだろ?それとも、目的を諦めて逃げるか?」
そう言ってきた。その瞳はやはり真っ直ぐ俺を見ている。なら、
「逃げない。俺は逃げ出さない。例え、誰かを傷つける事になってでも俺は魔法を使う。」
そう、ボイナを真っ直ぐ見て伝えた。すると、ボイナはニヤリと笑い、
「そうか。なら、修行を始めるのじゃ。まずは我と魔法を撃ち合うぞ。なに。"
そう言ってきた。
「じゃが、その前にお主、臭うのう。ちょっと臭すぎるのじゃ!今から我が魔法で小屋と風呂とやらを作ってやるから入れ。これからは毎日じゃ。いいな!」
そう言われた。鼻を押さえながら。なんか気分が落ち込んだ。
それから、1ヶ月魔法を撃ち合っている。今もボイナが放った"
俺はすぐに"
「"
そして、すぐに魔法を撃ち返す。すると、
「じゃから何度も言わせるでない!ただ呪文を唱えるだけじゃ強い相手には効かんぞ!イメージが重要じゃと何度も言っておるじゃろ。威力を持たせるのじゃ!」
そう言って、"
ボイナは容赦がなかった。毎日、かなりの威力を持たせた魔法を使ってくる。初級はまだ当たっても耐性のお陰で平気だが今の俺じゃ中級には耐えられない。
これが、この1ヶ月の毎日のやり取りだ。戦闘中の魔法を使う際のイメージが上手くいかない。でも、それは仕方ないと思う。
だって、俺は魔法なんてない世界の普通の高校生だ。ましてや戦闘なんて事もした事がない。急には出来ない。
だから、もう少し優しく教えろ。ある日、そう言ったら、
「じゃから何じゃ?我は本来、魔法なんて使わなくても強いのじゃ!それをお主の為にわざわざ魔力を使って教えておるのじゃぞ?感謝されこそすれ、文句を言われる筋合いはないのじゃが?」
と笑顔で言われてしまった。少し怒っていたと思う。ボイナは魔法を使わなくても強いらしい。
それから1つ気がついた。ボイナは魔法を使う時、呪文を唱えていない。聞いてみると、慣れれば無詠唱で使える様になるとの事だった。
夜になるまで毎日、戦闘の日々。そして修行を始めてから3ヶ月目。
ボイナ相手の魔法の使い方は上手くなった。今じゃ無詠唱でも使える様になった。魔法を使う際のイメージはほぼ無意識に出来る。だが、これはボイナ相手だから。
慣れた相手に魔法の使い方が上手くなった所で意味はないと、
「さて、お主の魔法の使い方も上手くなって来たと思う。瞬時に相手に対する魔法の発動は出来るようになっておる。威力も問題ない。じゃが、それは我との闘いに慣れたからかもしれん。じゃから今から島にいる魔物相手に闘ってもらうのじゃ。」
そう言われた。
「ちょっと魔力探知を使ってみるのじゃ。どうじゃ島の中にはかなりの魔物がおるじゃろ。」
ボイナに言われて魔力探知を行う。少しは魔法に慣れ、かなり集中すれば出来るようになった。脳裏に小さな魔力の反応がいくつも浮かぶ。
すぐ近くに凄く大きな反応。これはボイナだろう。だが、それ以外にも大きな反応が結構ある。
「この島には、ランクA相当の魔物もかなりおる。今のお主では敵わんじゃろ。じゃが、闘う相手が格上になる事は多い。その時に焦ってしまえば死んでしまうじゃろう。じゃから今のうちに慣れておくのじゃ、別に格上相手に勝てとは言わん。生き延びるのじゃ!よいか?とにかく生き延びろ。」
そう言ってくる。ボイナが俺に"
「それと鑑定は使うな。気付かれる前なら使う余裕はあるじゃろうが、いきなり襲われたら戦闘中に使う暇などないじゃろ。なら相手の事がわからない状況にも慣れる必要がある。」
そう言って、ドラゴンの姿になるボイナ。そのまま、飛び去ってしまった。島にいる間、魔物が俺に近寄る事はなかった。
それはボイナが居たから。圧倒的強者であるボイナを恐れていたからだ。それが島を出た。
今、森に人間が1人。魔物達にとって格好の獲物だ!
『どうすれば生き残れる?』
サポーターに聞いてみる。少しは生き残る可能性があがる筈だ。
〈この場に留まっていると魔物に見つかる可能性があります。今は安全な場所を確保するべきでしょう!〉
サポーターがそう言ってくれる。
俺は、森の中心から場所を移動する。移動する前にもう一度、魔力探知を行う。反応が弱い方へ逃げる為だ。
反応が弱い方へと森の中を進む。すると、こん棒を持った小さい人間みたいなのが現れた。なんか、物語に出てくるような、見たことある感じがする魔物。
俺は、魔物に向かって"
"
『なあ。今のってゴブリンだよな?』
見た目が物語に出てくるようなゴブリンと同じだった!ファンタジーの定番の魔物。
〈はい。ゴブリンで間違いありません。それよりマスター。ゴブリンには仲間がいる筈です。気配探知を!〉
俺が少し興奮しているとサポーターが忠告してくれる。
俺は周囲の気配を探ってみる。気配探知。ボイナから教えられた、周囲の気配や殺気を感じる方法。
すると、こちらに向かってくる気配がある。少しすると5体のゴブリンが現れた。全員こん棒を持っている。
俺を見つけたゴブリン達が向かってくる。攻撃は大した事はないが、初めての複数の相手との戦闘。
ゴブリンなら初級の攻撃魔法で倒すことが出来る。だが、俺は焦ってしまい、火属性火魔法の中級攻撃魔法。"
ゴブリン達の足元からあがる炎の柱がゴブリン達を焼き尽くすが、上がった炎の柱が周囲の木に燃え移る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます