《発見。そして破壊》

ゴブリンナイトが逃げて行った方に向かっていくと、ゴブリン達が数体集まり騒いでいた。


「あれは、何をやってるんだ⁉️」


森の奥に進んでみると逃げたゴブリンナイトを他のゴブリンがこん棒で殴っていた。その後ろには一体のゴブリンがいる。他の奴よりかなりでかい。


『あれは何をやってるんだ?あのでかいのは?』


〈あのでかいのは、ゴブリンジェネラルです。おそらく、ゴブリンマジシャンが死んだ責任を取らせてるんだと思います!〉


えげつないな。ナイトの奴は殴られるだけで抵抗はしていない。やがて、殴られ続けたナイトは全く動かなくなる。


「ゴブリンナイトは死んだみたいだな。」


ゴブリンジェネラルはナイトが死ぬと一瞥だけして他のゴブリンを連れて去っていく。


『何であいつ抵抗しなかったんだ?』


〈ゴブリンジェネラルはゴブリンナイトより格上です。下手に抵抗して殺されるより怒りが収まるまで殴られる事を選んだんだと思います。〉


なるほどね。なのに結局殴られ続けて死んだ、と。まあ、ゴブリン達が力による縦関係なら始末されるのは仕方がないのかな。


とりあえず、さっきのジェネラル達を追ってみるか。


しばらくジェネラル達をつけていくと、やがて山の岩肌が見えてくる。どうやらジェネラル達は山に向かっているようだ。


やがて、洞窟に着く。ジェネラル達は、外にいるゴブリンに声をかけて入っていく。


『あれ。やっぱり中に集落があんのかな?』


〈はい。規模は分かりませんが中にはかなりのゴブリンがいると思います。〉


ここなら、中に火魔法を撃ち込むだけで倒せそうだな!


「一応、中に人がいないか調べてみるか。」


俺はそう呟き、魔力探知を行う。これを行うには今の俺じゃ集中しないと出来ない。


半年前、ボイナに気配探知と一緒に絶対覚えておいた方が良いと言われた時の事を思い出す。


◆半年前

「さて、今からお主に魔法を教えるわけじゃが先に魔法を使うための基礎を教えようと思う。」


そう言って俺の方を見るボイナ。


「魔法を使うための基礎?でも俺の場合は」


俺が言葉を続けようとすると、


「わかっておる。お主はどんな魔法も呪文さえ知っていれば使えると聞いておる。だが魔法を使える事と魔法について知っている事は違うのじゃ。」


そう言って話を続けるボイナ。


「良いか。生物には必ず魔力が宿っておる。それは例え魔法も使えないほど弱くてもじゃ。でなければ人間なぞ生活に必要な魔道具と呼ばれる物も使えぬしな。そして、自分の中の魔力を知る事で初めて魔法が使えるのじゃ。」


「そうなのか?」


「うむ。そして今から教えるのは自分の中の魔力を探知する方法じゃ。その方法を知っておれば鍛える事で周りの魔力も探知出来るようになる。」


なるほど、それなら魔物に気付かれないよう近づく事も出来るかもしれない。


「自分の魔力を知るだけならば簡単じゃが、周りの魔力を探知出来るようになるまでは努力が必要じゃ。」


「どうやったら自分の魔力を探知出来るんだ?」


「ふむ。順序は逆じゃが、お主には先に1つだけ魔法を教える。"ファイア"。これはただ火をつけるだけの魔法じゃ。まずは試してみろ。」


「"ファイア"」


俺が魔法を唱えると体が不思議な感覚になる。


「どうじゃ?今、何かを感じたか?」


「ああ。何か不思議な感じがした。」


「それが魔力じゃ。後は何度も魔法を使いながら感覚を体に叩き込む。そうすれば、やがて周りの魔力を探知出来るようになる。じゃが探知も完璧ではない。魔力を完全に抑えておれば感じる事も出来んようになる。」


「なるほど。ちなみに俺の魔力ってどのくらいなんだ?」


「お主の場合は上限が感じられぬ。おそらくアルティア様に力を与えられたからじゃろう。超級魔法も何度でも使えるぞ。」


そう言って笑うボイナ。


あれから半年経つが俺の魔力の扱いは正直上手くない。一応、最近は魔力量がバレないよう抑えている。でも探知が出来る奴が街に来ればバレてしまうかもしれない。


俺は魔法は使えるが周りの魔力を探知する為にはかなり集中しないと出来ない。これは俺が魔法なんてない世界の人間だからだろう。


やがて、洞窟の中の探知も終わるが中に魔物とは違う感じの魔力があった。どうやら誰かが捕まってるらしい。


俺は無属性の"透明トランパレ"の魔法を使い、洞窟の中に進んでいく。探知によると人数は3人、一緒に居るらしい。ちなみにゴブリンキングが多分いる。他より魔力が高い奴が数体奥にいた。一番高い奴がキングだろう。


洞窟の中に入っていくとやがて、人族の女性を見つける。どうやら冒険者のよう。かなりボロボロだが元気そうだ。


「おい。ここから出してやる!」


俺が声をかけると驚いて周りを見渡す3人。


「だ、誰?」「誰だ何処にいる?」「お願い、誰でもいいから助けて」


そう言って騒ぎだす3人。騒がれると困る。


「静かにしろ。今は魔法で姿を消している。お前達にも、同じ魔法をかけるから全員手を繋いどけ。分かったら頷け。」


俺がそう言うと3人は頷き手を繋ぐ。俺は魔法をかける前に1人の手を掴む。


「今から魔法をかける。手は絶対に話すな。」


俺はそう言って魔法をかける。


「今から出るぞ落ち着いて、前の奴に付いてこい。」


声をかけて俺は歩きだす。手から重さが伝わる。無事に3人とも付いて来ている。


やがて、洞窟の外に着くと俺は手を放し声をかける。


「今からここを全滅させるから後ろの木まで下がっていろ。死にたくは無いだろ?」


俺がそう言うと3人は少し戸惑った後、下がったようだ。気配が教えてくれる。


俺は外にいるゴブリンを倒して、洞窟に向かって上級魔法を放つ。


"範囲爆発エクスプロージョン"。火属性の上級攻撃魔法。広範囲を爆発で吹き飛ばす魔法。


洞窟の中で爆発した魔法は中を一瞬で焼き付くし洞窟を破壊した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る