《1週間》

ギルドに登録してから今日で1週間が経つ。別に冒険者をやらなくても暮らさせるだけのお金はある。


けど、俺はこの1週間依頼を受け続けている。冒険者の生活は意外と楽しかったが色々と大変だった!


まず、登録して次の日にギルドに行ったときはクレアさんからダイルの事を聞いた。クレアさんの話だと罰金として金貨100枚の支払いで決まったらしい。


別に俺は興味なかったが、なんでも支部のトップであるギルドマスターが怒り心頭だったらしい。それだけギルド内での抜刀は重罪らしい。と言ってもギルドで決めたルールだが!


それから、あれも大変だった!


クレアさんとの話を終えた俺は依頼を受けた。ポーションの作成に使う薬草を取りに草原に行った時、ホーンラビットの群れが薬草を食べ尽くす勢いで周りの雑草と一緒に食べていた。


依頼が失敗すると罰金が発生するらしい。別に罰金は恐くないが最初の仕事で失敗するのは嫌だった俺は少し強力な"火球ファイアボール"を放ってしまった。


これが失敗だった。ホーンラビットは見事倒せたが、辺りは丸焦げだった。発生した熱は風魔法の"ウインド"で散らしたけど周りの薬草は灰になってしまった。結局、依頼は失敗。罰金に銀貨5枚を払うはめになった。これは成功報酬の半分の料金と決まってるらしい。


しかも俺の魔法のせいで、ここしばらく薬草が生えなくなったりしてポーションを作る錬金術師が騒いだり、ホーンラビットの依頼を受けた冒険者が見つけられなくて罰金が発生したりと迷惑をかけてしまった。


また、宿でも問題が発生した。実は俺は魔法を覚えてからは毎日、風呂に入っていた。


修行を始めた頃、ボイナに「お主、臭すぎるのじゃ!」と言われた。自分でも匂いを嗅いだが気づかないくらい慣れてしまっていて分からなかった。


でも、確かに半年も体を洗わずにいたんだ。匂って当然。一応、水浴びはしてたが汚れた時だけ。とにかく、これからは毎日風呂に入れと言われた俺はボイナが作った風呂に入れられた。


その時覚えたやり方で森にいた間も小屋を作って毎日風呂に入っていたんだが、さすがに街にいる間は入れてなかった。後で気づいたが街を出てる間に入れば良かっただけだった。


とにかく、街に来てから4日目に俺は限界を迎えた。今まで体を毎日、綺麗にしてたんだ。嗅覚も元に戻ってる。はっきし言って臭かった。


多分、毎朝、顔を会わせていたハンナは何も言わなかったけど俺の事が臭かったと思う。


アイナさんに風呂を作らせて欲しいとお願いしたら裏庭に作っていいと言われた。後で聞いたが普通、風呂は貴族しか持っていないらしい。


とにかく風呂に入りたかった俺は土魔法で小屋を作り、小屋の中に湯船を作り、水魔法で水を湯船に溜め、火魔法でお湯を沸かし、と急いでいた為、後ろにいたアイナさんの事も忘れて魔法を使いまくって風呂を作ってしまった。


風呂を作り終わり後ろを見ると口をぽかーんと開けたアイナさん。正気に戻ったアイナさんは色々と聞いてくるが今の事は黙っているようお願いした。


でも、代わりに毎日お風呂を沸かして私と家族も入れてねと脅迫おねがいされた。しかも、結局はハンナや他の客にもバレて入る度に温めさせられた。タダで。


俺がいなくなった後はどうするんだ?と聞いてみたら、なんでも水に入れるとお湯が発生する鉱石があるらしい。値段も安いそれを大量に手に入れるとの事。普通は料理の際にお湯を沸かすのに使うらしい。


この1週間、とにかく色々と忙しい日々だった。


1週間目の朝、食堂でハンナと朝ご飯を食べていると、


「ケント。私はもう、街を出てゾーン大陸に戻るわ!」


そう言って話を切り出してきた。ハンナとは、この1週間でかなり仲良くなったと思う。この世界に来て最初の友達だ。年も意外だけど同じらしい。それなのに急に別れるのは寂しい。


「何で他の大陸に行くんだ?」


俺がそう聞くと、


「もう、ホース聖王国には行ったし、この街にも1週間いる。シダ帝国には行きたくないし、ゾーン大陸に戻るには早い方が良いのよ。私はケントみたいに強くないしね。」


そう言っているハンナも少し寂しそうだ。確かに俺は大丈夫だけどハンナにとっては、やっぱりイース大陸は危険な場所だ。


「なら、仕方ないな。俺も何年後になるか分かんないけどゾーン大陸に行くから、その時にまた会おうな?」


俺がそう言うと、


「ええ、また会えるのを楽しみにしてるわ!一緒に居れて楽しかったわよ!」


そう言って笑ってくれる。ハンナはその後すぐにこの街を後にした。


これでゾーン大陸に行く理由が1つ増えた。ハンナを西の門から見送った俺は今日もギルドに向かう。


最近はギルドに入っても特に視線を向けられることはなくなった。俺はまっすぐ依頼の貼ってある掲示板に向かう。


「今日はこれを受けるか。」


まだ転移者は戻ってきてない。もし戻ってきたならギルドに入った時点でクレアさんは教えてくれるはずだ。俺は1枚の依頼書を持って受付に向かう。


「おはよう。ケント君!」


そう言って笑顔で挨拶してくれるクレアさん。彼女とも、この1週間でかなり仲良くなった。最近はいつもクレアさんが受付してくれる。俺は彼女に依頼書を渡す。


「えっと、討伐依頼ね。討伐対象はゴブリン。これ、Eランクの依頼だけど大丈夫?」


そう言って心配してくれるクレアさん。


「はい。大丈夫です!」


「わかったわ。ケント君は実際にはDランク相当の実力者だしね。でも1つ注意点が!ゴブリンは稀に上位種が普通のゴブリンを従えている場合があるの。もし、他のゴブリンより強いのがいたら無理しないでね!」


まあ、実際にはもっと強いです。だが、そう言うわけにもいかないから、はい。と答えておく!


「それと、あまり考えたくないんだけど、もしゴブリンが集落を作ってたら絶対に逃げて!多分、ランクA相当のゴブリンキングもいるから。ゴブリンキングがいるなら、それは幾つかのパーティーで組んで行う依頼だから。わかったわね?無茶な事はしたら駄目よ!約束ね?」


かなり心配してくれるな。まあ、俺も無理するつもりはない。多分。


「はい。約束します。」


「じゃあ受理するわね。倒す数は5体。討伐の証明に倒したゴブリンの耳を持ってきてね!場所も依頼書に書いてあるけど説明しとくわ。西の門から出ると南西に山が見えるから手前の森にゴブリンが沢山いるわ。普通に終われば1日で帰って来れるから戻ってきたら声をかけてね。」


そう言って受理した依頼書を渡してくれるクレアさん。


「あ、ポーションとか必要な物があれば2階で買っていってね。ゴブリンの耳を入れる用の袋も売ってるから。」


俺が依頼に出発しようすると声をかけてくるクレアさん。


ギルドの2階は売店や資料室になっていて買い物や魔物の事が調べられるようになっている。確かにポーションは必要ないけど耳を入れる袋は欲しいな。


俺は2階に行き袋を買うとギルドを出て、西の門に向かった。

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