《夢の終わり》

トラから逃げてから眠りについた俺は、いつも通り自分の部屋で目を覚ます。


そして土日明けの月曜、学校に行った俺の元に副会長が来て姫華姉さんの事を教えてくれた!


副会長から姫華姉さんが目を覚まさなくなったと聞いた放課後。


俺は副会長の遠藤あきに誘われて松本家を訪れる事にした。


「お待たせ!剣斗」


校門で待っていると彼女がやって来た。


2人で松本家に向かう。


松本家は俺の家からたいして離れていない。


「あきです。剣斗君も一緒です。ヒメのお見舞いに来ました。」


松本家のインターホンを押し、副会長が声をかける!


「今開けるわね!」


そう返事をして家から出てきたのは、姫華姉さんの姉の美幸みゆきさんだった。


美幸さんは現在、大学生で家から出て1人暮らしをしているはず、心配で戻って来ているんだろう。


「2人とも久しぶりね!」


「「お久しぶりです!」」


俺達に声をかけて家に入れてくれる美幸さんに案内されて姫華姉さんの部屋に向かう。


声の感じだと比較的落ち着いているようだ。


この感じだと姫華姉さんの事はそこまで心配する事じゃないのかもしれない。


ニュースの人達と違って本当はただ寝てただけだ今はもう起きてるのかも!


そんな事を考えて部屋に入った俺の目に飛び込んできたのは


「ヒメちゃん起きて!2人が来てくれたわよ。お願い!目を覚まして」


姫華姉さんの体を揺さぶり泣きそうな顔で声をかけ続けるおばさんの姿だった。


「お母さん、落ち着いて!きっと大丈夫だから。すぐに目を覚ますわよ!」


「おばさん、落ち着いて!ヒメならきっと大丈夫です!」


美幸さんと副会長がおばさんに優しく声をかける。


「ごめんなさい、ヒメちゃんが心配で。私の病院でも同じ状態で入院している人達がいるからヒメちゃんも、このまま目を覚まさなかったらって思うと」


2人に支えられて立ち上がったおばさんが泣きそうな顔で返事をする。


おばさんは近所の病院でナースをしている。


確かに、この町でも何人か目を覚まさなくなった人がいる。


しかも全員、姫華姉さんと同い年ぐらいの人達だ。おばさんが心配するのは無理ない。


「昨日の朝は、ただ休みだから寝坊しているだけだと思って私は仕事に出掛けたの。でも、帰ってきて夜ご飯が出来たのに呼んでも降りて来ないから部屋に入ったら朝と同じ状態で寝ていて、何回も声をかけたり揺さぶったりしても目を覚まさなくて。」


それで急いで病院に連れて行くと他の人達と同じ状態と言われて、明日から入院で今日は準備のために1日家にいる事にしたらしい。


おばさん達から話を聞いて、俺達も声をかけたりするが姫華姉さんの反応はない。


今日は暗くなって来たから帰る事にした俺達は病院に必ずお見舞いに行くと告げて松本家を出た。


帰り道は会話もなく2人とも黙って歩いていると、副会長が小さな声で呟く。


「ヒメ…」


俺は、その声に立ち止まり副会長の方に振り向き声をかける。


姉ねえ、きっと大丈夫だよ!姫華姉さんなら絶対目を覚ます。俺はそう信じてる!」


俺がそう言うと副会長は一瞬、呆気にとられてから笑いながら同意した。


「ふふ、そうね。ヒメならすぐに起きるわね!」


と返事をして、続けて


「それにしても、懐かしい呼び方するわね!高校生になってからは名字にさん付けか副会長としか呼ばなかったのに」


と笑いながら話しかけてきた!


「それは学校だと姉さん達の人気が高すぎて親しくすると後が怖いんだよ!」


「まあ、確かに。特に、ヒメが声をかける時なんか周りが騒がしくなるわね!」


「だろ!だから距離を置いてんのに姫華姉さんは普通に声をかけてきたりするから困るんだよね。」


そう2人で会話をしながら副会長を家に送り、俺も家に帰った!


家に着いて夜ご飯を食べて風呂に入った後、部屋で休んでいる俺は姫華姉さんの事を考えていた。


「姫華姉さんなら大丈夫だよな。きっと目を覚ますハズだ」


そんな事を考えながら横になっていた俺は、いつの間にか眠ってしまったらしく気が付いたら砂漠に居た。


相変わらず、岩場以外何も無い砂漠を歩き続けた俺は岩場の影で横になり眠りに着いた。




目を覚ました俺は混乱していた!


いつもなら眠ると普通に部屋で目を覚ますのに、今日は何故か起きても岩場の影に居た。


混乱している俺の頭の中に誰かの声が聞こえてきた!


『もしもし、聞こえてますか~?』

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