第32話 不思議なメイド
四階。
その場所はこれまでの階と少し違い、人がいた。
戦闘は一度も行っていないのに、激しく疲弊した我々をその人物は微笑んで出迎える。
「いらっしゃいませ」
愛らしい笑顔。
そしてメイド服。
レースのついた三角巾に覆われた赤毛。
スカートは膝より少し上。
白く細い足はソックスで覆われ、足元には黒い革靴。
長袖のフリルがついた腕で椅子を引いて、また微笑む。
「ご注文を承ります」
「…………。…………いや、その階段を登りたいのだが、どうしたらいいのか教えてくれるかな」
メニュー表を差し出してきた可憐なメイドさんは、緑色の瞳をキョトンと丸くする。
アーノルス様が指差したのは部屋の片隅にある
この部屋は四方に窓があり、レースカーテンがたなびいている。
明るく、花瓶に生けられた花は自らの美しさを自慢するように咲き誇っていた。
テーブルが三つあり、そのそれぞれに椅子も三つずつ。
このメイドさんの意図が分からない。
それに、ここはダンジョンの中のはず。
………………。
そういえばここはダンジョンの中だったな。
じゃんけん大会が白熱しすぎて大切な事を忘れていた気がする。
そうだ、ここは本来、凶悪な魔物が闊歩するダンジョンのはず!
なぜレストランのような場所にメイドさんが⁉︎
それに、メニュー⁉︎ 注文⁉︎
な、なんだこの部屋は⁉︎
今度はどんな罠だ⁉︎
「…………休息は取られないのですか?」
「あいにく、ダンジョンの中で何者とも分からない相手から施しは受け取れないよ」
アーノルス様の言葉に、気絶したカルセドニー以外が頷く。
確かに……体力的というよりも精神的に疲労困憊。
なんというか、今すぐベッドで寝たい衝動すらある。
疲れた。ものすごく疲れた!
し、しかし、勇者アキレスの痕跡も聖剣も、そしてなによりダンジョンボスも見付けていない。
我々は立ち止まるわけにはいかないのだ……!
まして、ダンジョン内でレストランのような場所に勤めるメイドさんから美味しそうなケーキの名前の書かれたメニュー表を差し出されても!
普通に罠としか思えない!
「…………。さすがは勇者様。それでは、四階の主、キニスンが皆様のお相手を致します」
「っ!」
このメイドも幻術だろうか。
身構え、武器に手をかける。
キニスンと名乗ったメイドはゆっくり、片手を上げる……そして。
「生麦生米生卵! はい!」
「はい⁉︎」
はい⁉︎
「どうしました? 初級ですよ。さあ、どうぞ!」
「ま、まさか!」
「今度は早口対決⁉︎」
「この階では全員が早口でわたしに勝って頂かなければあの梯子を登らせません。……ですから先にお茶で喉を潤しておけば良かったのです」
「くっ!」
そ、そういう事だったのか⁉︎
あ、いや、そ、そうではなく!
「ま、待って欲しい! そもそもあなたは何者なのだ⁉︎ 魔物、には見えないが……」
「早口以外の無駄話はお答え出来ません。さあ、生麦生米生卵!」
「…………」
……なんというか……全員が肩を落とした。
じゃんけん大会で我々は相当に叫び、嘆き、怒り、そして歓喜したのだ。
喉がカラカラなのは元より、あの流れで早口言葉だなんて……。
「な、なんという精神面に凶暴なダンジョンなのだろう……こんなダンジョンは初めてだ……っ」
「う、うえーん、アーノルス様〜……俺、早口言葉苦手ですよ〜」
「知ってるわよ。でも、全員クリアしないとダメっぽいじゃない。……武器も持っていないみたいだし……あんな女の子を全員でフルボッコするわけにもいかないわ……」
「うむ、そんな事をすれば勇者一行とは名乗れんのだよ……」
「私も武器を持たない少女への武力は反対です、が……早口……」
「しかも全員かー……僕もクリスほど得意じゃないんだけどー……」
「一回休ませてもらうとか無理なのかな〜? 交渉してみなよ〜」
「そ、そうだな……」
とりあえず全員疲れ果てている。
早口対決なんて、正直今の精神状態で上手く出来る気がしない。
アーノルス様が彼女に振り返り、改めて「休息を取りたいのだが」と言う。
「早口言葉以外の無駄話は受け付けません。休息を取られないと判断されたのは勇者様方です」
「うう……」
その通りなので押し黙る。
これは、やるしかないのか……。
「わ、分かった。……生麦生米生卵」
「生麦生米生卵」
「もっとお早く!」
「なまむぎながもめ…………うっ」
リガル様が何度も躓く。
リリス様、ローグス様、エリナ姫、クリス様はいつも詠唱を口にしているからか実に楽勝。
アレク様もこの程度なら余裕、と一発クリア。
私もなんとかクリア出来た。
リガル様は四、五回チャレンジしてようやく……。
初級でコレとは……ふ、不安だ。
「もう一人の方は……」
「すまない、気絶しているのだよ」
「え……? このダンジョン内に気絶する要素はないような……」
「いや、身内の攻撃なのだよ」
「す、すまないカルセドニー……」
「…………。わ、分かりました。そちらの方は除く事と致します。では中級……参ります! 駆けっこでこけかけた過去!」
中級とやらも魔法使い組とアレク様は危なげなくクリア。
私とアーノルス様も、二度目でクリア。
リガル様は十回以上失敗したが、落ち着いて早く言える事さえ出来ればちゃんとクリア出来る。
というわけで…………。
「上級、参ります! かえるぴょこぴょこ、みぴょこぴょこ、あわせてぴょこぴょこ、むぴょこぴょこ!」
かえ、え?
「かえるぴょこぴょこ、みぴょこぴょこ、あわせてぴょこぴょこ、むぴょこぴょこ!」
「かえるぴょこぴょこ、みぴょこぴょこ、あわせてぴょこぴょこ、むぴょこぴょこ!」
かえ?
え?
うう! も、もうわけが分からない……!
なんで普通に言えるんだリリス様、ローグス様!
「かえるぴょこぴょこ、みぴょこぴょこ、あわせてぴょこぴょこ、むぴょこぴょこ」
「かえるぴょこぴょこ、みぴょこぴょこ、あわせてぴょこぴょこ、むぴょこぴょこ」
ぴょ、う、ぴょ?
エリナ姫とクリス様のを聞きながら練習してみるが、やはり途中から分からなくなる。
「かえるぴょこぴょこ、みぴょこぴょこ、あわせてぴょこぴょこ、むぴょこぴょこ」
「むう、さすがですね……魔法使いの方々は。さあ、勇者様」
「うっ」
「うっ」
「かえるぴょぴょっこ、みこぴょこ、あわせてぴょぴょぴょぴょ、むぴょこぴょこ…………」
「かえるぴょこぴょこ、みぴょこぴょこ、あわせてぴょこぴょこ、むぴょこぴょこ…………です」
う分かるくぅぁあああ⁉︎
「そもそもなぜ早口をしなければならないんですか⁉︎」
「はっ! オルガものすごく初歩的な質問!」
「ホントだよ! ボクらなんで普通に早口言葉やってたんだろう⁉︎」
「無論、このダンジョンに入った皆々様の心を折るためです。なさらないのでしたらお帰り頂く事になります」
「くっ」
それもまた至極真っ当な答え!
彼女が何者なのか、そして、恐らく勇者アキレスの事も……答えてはくれないのだろう。
だからつまり……早口言葉を……クリアするしか、ないのか……うう。
「かえるぴょこぴょこ、みぴょこぴょこ、あわせてぴょこぴょこ、むぴょこぴょこ」
何度目かのチャレンジで、ようやく私もリガル様もクリアした。
正直だいぶ心が折られた……早口言葉こわい……こんなに過酷なものだったなんて……うう。
「……どうしてもお帰り頂けないのですね?」
「わ、我々は……勇者アキレスとその聖剣の安否を……確かめねばならない……!」
「アーノルスがここまで追い詰められたのを見るのは初めてね……、……は、早口言葉……これほどの強敵だったなんて……」
「さあ、上級をクリアしたのだ! そこを通してもらうのだよ!」
「…………」
キニスンはキッと我々を睨む。
……もしかしたら、彼女は……。
「か、勘違いしないで欲しいのだが、私たちは勇者アキレスとその聖剣を害そうというわけではない」
「………………」
「確かにミュオール王に依頼はされたが、ミュオールは奴隷制度を廃止した。いつまでも奴隷だった者たちを奴隷として扱うのはおかしいと思う。アキレス様がこのダンジョンに籠られたのが、その事への抗議であるのなら、それは最もな事だ。……あの方にはそうする権利がある」
元奴隷だと聞いた。
このメイドもそうなのかもしれない。
だから、アキレス様とその聖剣を守ろうとしているのでは……。
だが、そう考えると……おかしな点が浮かび上がる。
ここはダンジョン。
それも上級だ。
アキレス様がこのダンジョンに籠られているのなら……アキレス様は本来魔物の巣窟であるダンジョン内でご無事だという事なのか?
それにしては魔物は一体も現れない。
しかし、ダンジョンの外にまで漏れ出す瘴気……。
まさか…………。
一つの考えが浮かぶ。
「……勇者アキレス様は……ご無事なのだろうか? それだけでも、教えてはくれないか?」
……まさか、アキレス様は……ナナリーのように――っ。
「………………。……なるほど、勇者……一筋縄ではいかぬ方ばかり……ですか。けれど、まだ弱い。わたしは信じませんよ、まだ。あなたたちの事を信じません。信じられません。ここまで心折れずに登ってきた事は褒めましょう。でも、強ければ強いほどあなたたちはわたしたちの敵なのです。だって、あなたたちは――」
キニスンが両足を開き、肩を僅かに屈める。
天井に向けて右手を突き出すと、グネグネと虹色の光が輝いた。
その輝きの中より現れたのは――……一振りの聖剣!
「なっ!」
「聖剣だと⁉︎」
三角巾を剥ぎ取るキニスン。
その頭には大きな三角の耳。
スカートからは、細長い尾。
だが、その手には輝きを放つ聖剣。
なに、え?
頭が追い付かない!
「わたしの名はキニスン。これはベルチェレーシカの聖剣。あなたたちと同じ『勇者』……という事になるのでしょうね。でも、わたしは魔物『スキルキャット』と融合した……『魔人』! だから信じない。あなたたちを信じません! “わたしたち”魔物を殺して強くなるあなたたちを、どうしてわたしが信じられましょうか! 帰ってくれないのなら仕方ない…………殺す!」
「っ!」
風圧が部屋中を駆け巡る。
キニスンの手にした聖剣は、私とアーノルス様の聖剣の形を保ったまま巨大化していく。
その大きさは、彼女の背丈をゆうに超えた。
聖剣が、大きさを変える!
そんな事があるのか⁉︎
こんな事が……!
『魔人』だと⁉︎
魔物と融合?
ベルチェレーシカの聖剣……?
ではキニスンはベルチェレーシカの勇者⁉︎
……ナナリーの国の……?
「来るわよ! みんな!」
聖剣を引き抜く。
リリス様がローグス様と共に後ろへと飛ぶ。
アレク様が溜め息を吐きながら人差し指をキニスンへと向ける。
「アレク様!」
「分かってるよー、無効化するよー」
ゆるい声色だが、アレク様の指先から奴隷商人の男たちを拘束した魔法が放たれた。
あれなら……!
「ふん」
あの大きさの聖剣を軽々と振り下ろし、アレク様の魔法を打ち砕く。
そうだ、聖剣には魔法を砕く力がある。
アレク様が「ヤベェ、忘れてた」と舌を出して笑うが割と笑い事ではない。
「ちょっ! アレクちゃん! あの子の聖剣? でかくない⁉︎」
「多分聖剣のレベルが違うんだよ。鍔の石の色が多い」
「!」
剣の鍔の石?
私たちの聖剣と同じデザイン。
しかし、鍔に埋め込まれた石の輝きが違う。
私のはオレンジ、アーノルス様は青。
それぞれ中央の大きめな一つが輝いている。
石は全部で五つ。
キニスンの聖剣は、中央の大きめな石とその左右の一つずつが紫色に輝いていた。
「……え⁉︎」
「ちょっと待って! 聖剣のレベルってなによ⁉︎ アレクちゃん今隠し事とかほんと勘弁!」
「えー、僕別に専門家じゃないしー……。……ただ、オルガや金髪勇者の聖剣の鍔にはめ込まれていた石が一つしか光ってないからそうなんじゃなーい? って」
「つまり推測の域を出ないと言う事かね⁉︎ ……聖者の声に応えよ! ホーリースターランス!」
ローグス様の光の槍が三本、キニスンへと向かう。
しかしそれも一振り。
すさまじい力を感じる……!
“同じ聖剣”を持つ者とは思えない。
「クリス君! 例のやつを頼む!」
「え、本気〜? んまあ、本人がいいんならいいけど〜」
「なにをするつもりか知りませんが、その前に倒します!」
キニスンがアーノルス様に標的を絞り、振りかざした大聖剣を振り下ろす。
寸前で避けるアーノルス様だが、足元が盛大に陥没した。
それにより、バランスを崩すアーノルス様。
その間にクリス様が翌日筋肉痛確実なレベルの強化魔法を重ねかけしていく。
私も、その隙に『鑑定眼』でキニスンを見た。
【キニスン】
レベル115。
属性『土』『闇』
HP16280/16280
MP6580/6580
職業『村人』『勇者』
称号『魔人』『勇者』。
称号スキル『聖剣使用』『聖剣召喚』『聖剣適応』。
所有スキル『スキルエラー』『ドロップB+』『スキルコピー』『ねこばば』『烈爪A+』『回し蹴り+A』『砂かけダッシュ』『ねこぱんちA+』『連続ねこぱんちA+』『すごい連続ねこぱんち』『ねこきっく』『すごいねこきっく』『大切断』『穴掘り』。
生活スキル『料理レベル5』『掃除レベル6』『洗濯レベル6』『鑑定眼レベル2』『商売レベル2』『畑作りレベル5』『制作レベル2』。
「………………」
「どうしたの〜、オルガ! 固まってるよ⁉︎」
えー、えーと……私の鑑定眼はレベル1、だよな?
それなのにこの情報量は……。
「き、君、キニスン……まさかステータスロックしていないのか?」
「?」
あまりに情報がダダ漏れなので、心配になり思わず剣を下ろして冷静に問い合わせてしまった。
横向きに聖剣を構えていたキニスンが停止する。
私の質問になにを感じたのか、ローグス様も鑑定眼を使いキニスンを『視た』らしい。
そして、同じく一瞬固まって……。
「あ、アホかね君! ステータス情報がダダ漏れなのだよ! ステータスロックしていないのかね⁉︎」
「え? え? ス、ステータスロック……?」
「知らないのか⁉︎ ステータスにはロック機能がある。それをしないと『鑑定眼』で情報が筒抜けになるんだ! 名前やレベルは『鑑定眼レベル1』でも視られてしまうが、それ以外の情報は相手の『鑑定眼』のレベルと自分のレベルに応じて制限がかけられる! き、君、情報が丸出しだぞ⁉︎」
「え? え?」
「え? そんなのあるのー?」
「え? そんなのあるの〜?」
「お二人もですか⁉︎」
そういえばアレク様とクリス様は異世界人……。
ステータスの見方もご存じなかったのだ。
ステータスロックについて、説明もしていなかった気がする。
あまりにも冒険者にとって常識だったので、説明するのを忘れていた!
「ステータスを開いてください」
「はーい」
「は〜い」
「は、はい」
言われた通り素直にステータスを開く三人。
その指を縦にスライドさせ、ステータスを開いた後、今度は横に指をスライドさせて装備を開く。
装備メニュー、その他から、ステータスロックのオンとオフを選択するのだ。
冒険者にとってステータスロックは常識中の常識。
相手が『鑑定眼』を持っていても、これなら全ての技や、なんとなく視られても問題はないが恥ずかしさは感じる生活スキルを視られないよう遮断出来る。
モンスター相手なら自分の知識が影響するが、対人の場合自分の情報を相手に与える事は不利になる場合もあるからだ。
仲間に公開するならば話は別だがそれでも普段はロックをかけて閲覧制限するのが当たり前。
「へー、ほー、これで見れなくなるの?」
「相手の『鑑定眼』レベルにもよるが、対人の場合は名前やレベル以外だと得意な属性ぐらいしか閲覧出来なくなるのだよ」
「そうだったんだぁ〜。でもボクらのステータスなんて視られても多分全部読みきれないよね〜」
「あー、確かにー」
「そういう問題ではありませんよ!」
……このお二人、いまいちご自分のレベルの高さが異常な自覚が足りない。
いや、まあ、教えるのをすっかり忘れていた私も悪いのだが……。
頭を抱える私とローグス様を尻目に、えへへと笑うお二人。
事の重大さは後でしっかりお教えしよう。
このお二人を『鑑定眼』で視た者がいなければいいんだが……。
「出来ました!」
「うむ。気を付けるのだよ」
「いや、待ちなさいよそこのアホ眼鏡と脳筋女勇者。なに敵にアドバイスしてんのよ」
「…………。つい」
「つ、つい」
「んもおおおおおお!」
しまった、リリス様のおっしゃる通り……自然な流れで彼女にもステータスロックのやり方を伝授してしまった。
ま、まあ、彼女のステータスはしっかり視た後なので対策としては……。
「何はともあれ、彼女の属性は『土』と『闇』でした! 危険と思われる技は『スキルコピー』『烈爪A+』『回し蹴り+A』『ねこぱんちA+』『連続ねこぱんちA+』『すごい連続ねこぱんち』『大切断』などです!」
「スキルコピー持ちか……! 確かに厄介だな!」
「スキルコピーってアレだよね、他人のスキルを一度だけ真似出来るやつ!」
「はい!」
さすがのリガル様もご存じだったか。
その通り、『スキルコピー』は他人のスキルを一度だけ真似出来る特殊スキルの一つ。
一度だけだと限定的に思えるが、私のスキル『烈翔剣』をコピーして使った後、同じく『烈翔剣』を真似して使う事は出来ないが……『鶴突剣』を真似してからなら、また『烈翔剣』を真似して使う事が出来る。
無論、本来の使い手に比べれば威力は落ちるが、たとえばクリス様の使う『リミットブレイク』のような身体強化技をコピーされれば……彼女のあの身体能力を考えると――。
「クリス君、やはり例のやつは封印だ」
「へ? なんで〜⁉︎」
「真似されたら厄介だからです。通常状態であのパワー……、もしクリス様の身体強化技系魔法を真似されてはとんでもない事になります」
「え〜……でもアレクがその気になればあのくらい……」
「いやー……クリス、忘れがちだけど僕、『土属性』は苦手だからね?」
「そうだった」
「そうなんですか?」
アレク様にも苦手なものが?
「土は電気を逃しちゃうでしょー。手加減して戦ってるから『土属性』系の技は苦手なんだよー」
「今その話しないでくれる⁉︎」
「良い事を聞きました! 『砂かけダッシュ』!」
「え」
後ろを向いた、と思ったら猫のように四つん這いになって猛烈な砂かけ!
目潰しと視界を遮る効果のある技か!
「いた! いた! こ、小石飛んでくる〜! むかつくぅ〜!」
「あうううー」
「アレク様⁉︎」
アレク様の周りに茶色い
なんだ、これは⁉︎
「いかんのだよ、これは『命中率低下』なのだよ!」
「まずい! 全員左右に飛べ!」
「っ」
アレク様の首根っこをリガル様が掴み、右側に飛ぶ。
私はとっさにエリナ姫を同じ方向へ突き飛ばしアーノルス様の声がした左へと、その勢いを利用して飛んだ。
まだ土埃舞う、視界の悪い状況の中……中央に光り輝く大剣がすさまじい勢いで落ちてくる。
これは!
「聖剣リーカ…………『大切断』! 地の底まで落ちて、死んでください!」
「うわああああ!」
「きゃああぁ!」
砂埃が再び舞い上がる。
そんな中、地面が衝撃に耐えきれず砕け始めた。
床だったところに空気と埃は一度急速に集中してから、音と共に大爆発でもしたかのような衝撃波を我々に浴びせる。
みんなの声。
助けなきゃ…………でも、体は浮遊感と視界は闇に支配されて手を伸ばしても誰も掴めない。
どうして、キニスン……彼女は…………。
そんな疑問も、意識と共に遠退いた。
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