霊能企業戦士
れなれな(水木レナ)
プロローグ
「エコエコアザラク。エロイムエッサイム。我に力を与えよ――」
地下の万物が、礼拝堂に這いよる。
しんとした空気。
神秘的な光が放たれて、昔の親友がよみがえった。
『光が、見える――』
果報者は言った。
真剣に、闇夜の中で――あるいは、闇世と言いかえてもよかったかもしれない。
4歳くらいの男の子が、彼女の光を見て驚いた声を上げた。
「だいじょうぶ?」
「あ、うん……びっくりした」
「これくらいのこと、できなきゃだめよ」
「できなくても、いきていけるよ」
もう少しで、彼女は自分を抑えきれないところであった。
「エロイムエッサイム!」
ボウン!
数十年単位で知識量が蓄積されていれば、めちゃくちゃな呪文詠唱であるとわかる。
だがしかし、その脅威の4歳女児の前で、彼女の思念は具現化した。
めらめらと燃え上がる、炎――。
「こらー」
4歳男児の反応が変なので、4歳女児はきょろきょろする。
「こえ、おおきいわよ。ひびくでしょうっ」
そして続ける。
エロイムエッサイム。
それはたしか、水木しげる作の『悪魔くん』が悪魔召喚に唱えた呪文。
「エンジョウしてるよっ」
4歳男児がネットで憶えた単語をそのままいった。
はたして、それは正しかった。
「ほんとだ」
バタバタと――それは、シスターがオルガン演奏の時に使っていた――クッションをふりまわして、カーテンの火を消した。
『たすけてくれて、ありがとう』
4歳女児は、頬がゆるむのを感じた――。
その声は低く、高かった――。
甲高い声が響き渡る。
真実の闇へと、ひきずりこむかのような、しゃがれたかすれ声で。
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