第25話女児パ〇ツの購入と新たな敵?




 今、私たちはメドを真ん中に手を繋ぎ、街中を散策している。


 本当は私が真ん中でメアド (メドとアドの略)を両手に花みたく歩きたかったんだけど、アドが私が近づくと「がるるっ」て威嚇するから諦めた。


 一体いつになったら私に触らせてくれる……

 んじゃなくて、仲良くしてくれるんだろうなぁ?



「メドが知ってる服飾屋さんって可愛いのもあるの?」


 私は手を繋ぐメドに聞いてみる。

 できればお揃いの可愛いパンツ欲しいからねっ。


『うん?』


 ちょっと待てよぉ?


 別にお揃いじゃなくても良く無くない?


 むしろ違う柄を買ったほうが良い気がするよ。

 メドもアドも、そして私も。


 何でかって?


 そんなの決まってるじゃない。

 

『ふふんっ!』


 別々な柄だこそ『見せあいっこ』が出来るんだよぉっ!


 だってお揃いだったらお互いに見る必要がないでしょ!


――――


 『フーナさまの可愛い。ワ、ワタシのも見て?』


 そう言って白いワンピースを捲り上げ「クマさん」パンツを見せるメド。

 その顔は視線を脇に逸らして涙ぐんでいる。頬も羞恥で赤く染まっている。


「ぐふふふふっ! つ、次は――――」


 『フーナ姉ちゃんの可愛いなっ! 俺のも見てくれよぉっ!』


 青いホットパンツをズリ下げて「青い縞々」パンツを見せるアド。

 その顔は無邪気な笑顔で、口端からは八重歯が覗いている。


「ぶふふっ! い、いいよっ!二人ともっ!!」

「………………」

「…………びくっ」


 私はそんな妄想をしながら街の中を歩いていく。

 早くそんなイベント来ないかなって期待して。



 あ、そう言えば、あの後ギルドがどうなったかっていうと……



※※



「ん、これ修理代」


 メドが冒険者ギルドの従業員の一人にお金を払う。


「あ、ああ。すまんな」


 それを受け取り頭を下げる一番の年長の男の人。

 名前は「ジーア」さん。年齢は30代前半の渋い人。


「メドちゃんに守ってもらって、しかも修理代貰っちゃうなんて気が引けるっす」


 こっちの若い男の人は「コータ」さん。まだ見習いだそうだ。

 見た目は髪も長くてチャラいけど、意外と真面目で優しそうだ。


「そうよね。でも受け取らないとキツイのも事実。なにせここのギルドはお金ないよのねぇ。討伐レベルの低い魔物ばっかだし」


 最後のお姉さんは「シーラ」さん。年齢は10代後半くらいに見える。

 ちょっと派手めな美人さんだ。


 私がもろもろ壊した、そういった物の弁償をメドがしてくれた。


 屋根や床もそうだし、建屋の中にあった家具とか壁とかも。



「メドありがとうねっ! 私が甲斐性なしのせいで……」


 ギュッ


 私は感激のあまりメドのお腹に縋りつく。

 そしてついでに嗅覚に意識を集中する。


 くんか、くんか


「ん、別にいい。それよりも買い物行く」

「でも……」


 メドは私の頭に手を置いてそう言ってくれる。

 ちょっと申し訳なかった。


「そもそもあの屋敷の物はフーナさまの物。あそこにあったお金も同じ」

「えっ!? あのお屋敷に金庫なんてあったの?」

「地下にある。宝物庫が」

「宝物庫?」

「ん、ワタシの財産が」

「へ、へぇ~~」


 そ、そんなものがあったんだ。


 ドラゴンのメドが言うんだから、結構なお宝だよね?


 だってドラゴンは光るお宝集めるのが好きなんだもん。

 どっかの薄い本で見た事あるもん。そういった系の。


「でも管理はメドに任せてもいいかな?」

「ん、何で?」


「だってわたしが持ってると衝動買いしそうだし、アドには任せられないし。だからメドに持ってって欲しいんだ。わたしとアドはお小遣い制でいいからね」


「ん、わかったフーナさまの命令。ワタシが持ってる」

「うん、よろしくねっ!」


※※



 そんなこんなで冒険者ギルドの一件は無事に済んで、3人で歩いている。



「へぇ~色んなお店があって活気あるね」


 私はお上りさんの様に周囲の街並みを見て、そう感想を述べる。



 私たちが歩いてるところは恐らく繁華街。

 色々な屋台やたくさんの露店が道を埋めている。


 見た事もない、色とりどりの果物や野菜らしい形の物。調理して売られている種類の多い串焼きやスープや飲み物。海鮮物は少ないけれど、干物みたいなものが売られていた。


 そしてここを抜けると商店街。

 私たちは街の中央に近づくように歩いている。


「うわ~~、ここも色んなお店があるねっ!」

「ん」

「がうっ!」


 雑貨屋さんに靴屋さん、武器屋さんに、アイテム屋さん。

 何かの占い屋さんに、ペットショップみたいなのもある。



「ん、着いた。フーナさま」

「おお、結構おっきいねっ!

「がうっ! デカいなっ!」


 3人で仲良く歩く事10分。

 ようやくメドに案内されたお店の前に着いた。


 歩くって言っても私だけ『ほばー』の魔法で地面スレスレを浮いていたけど。

 だって無駄に長いローブのせいで転んじゃうから。


「ふえ~何でも売ってるんだね?」


 2階建ての店内に入り中を見渡してひとり呟く。


 衣服を買うために来たから、服ばっかりだと思ったけど違った。

 もちろん服が主で売ってるけど、寝具や家具関係も充実していた。


 入って中央付近には衣料関係の、肌着や上着、靴下や下着などがあった。

 店内の壁際には手前が寝具関係で、奥に行くほど家具も置いてあった。


 庶民的なものや、少し高級そうな生地や意匠なものまである。

 随分と幅広い商品を置いてるようだった。


「いらっしゃいませぇ~っ! 本日はどういったご用件ですかぁ?」


「はい?」

「ん」

「がう」


 私が奥にある天蓋付きのベッドを見ていると、女性の店員さんが声を掛けてくる。

 なんか甘ったるい声の若い女の人だった。


「あ、あのわたしたち下着買いに来たんですっ!」

「ん」


 私は手を繋いでるメドを見ながら店員さんに答える。

 メドは店員さんに頷く。


「あ、それでしたら私がご案内しますぅ」


 そう言って前に立って先導してくれる。



「では長いローブの方と、白いワンピースの方はこちらですぅ」


「は、はい」

「ん」


 私とメドは手前のコーナーに案内された。

 

 そこはいかにも女児が身に着けそうな、布地の面積が大きいもの、そして動物の刺繍入りの下着が色とりどり置いてあった。


 子供向けのもあるけど、ちょっとだけ背伸びしたい女児用のものまである。


 うん、幼女の微妙な女児心もわかってるねっ!


「あ、お姉さんありがとうございますっ」

「ん、ありがとう」


「いえいえ、どういたしましてぇ~」


 私は早速手に取りパンツを物色する。


「おお、可愛いの結構あるねっ! 色もたくさんだよぉ!」


 できればメドにも試着してもらわないとねっ!


 何て思いながらあちこち手にしてると、


「それではお客さまは、こちらにご案内しま~すぅ」

「がう?」


 店員さんに連れられて、アドだけは別に行ってしまう。

 

 あれ? そこって


 メドと不思議そうに二人の行く先を見ていると、アドが一人だけ案内されたのは「大人肌着コーナー」だった。


「………………」

「ん?」


 きっとアドの二つのカボチャを見て勘違いしたのだろう。

 確かに私とメドのところにはないサイズだからね。

 そもそもブラジャーも置いてないし。


「もし付け方とか分からないようでしたら、お声かけてくださいねぇ~。それと、もしサイズが無くても、オーダーでお渡しすることも可能ですよぉ。では~」


 アドの案内を終えた店員さんは、それで店内の巡回に戻っていった。


「が、がうぅ? メド姉ちゃんお願いっ!」

「ん。分かったすぐ行く」


 そうアドに返事してメドは歩き出す。


「あ、ああ、メドは買わないのっ!」

「ん、今日はフーナさまとアドの分だけ。ワタシは大丈夫」

「えっ!?」


 そう言ってアドのところに行ってしまった。


「なっ、なっ、なっ……」


 なんてこったぁぁぁぁ――――っ!!!!


 メドも私も試着して、お互いに見せっこする予定だったのにっ!

 そしてこっそりメドが試着したもの買う予定だったのにっ!!


 何だよっ! 

 もう何だよぉっ!


 私はブツブツと一人で文句言いながら、それでも物色を開始する。


「まだだ、まだわたしの野望は終わらんよぉっ!」


 まだメドに似合う可愛いの買って、お屋敷での見せあいっこが残っている。

 それにアドの分も買って3人でパンツパーティーも出来る。


 私の野望はついえる時がないのだ。

 いくらでも創造できるのだ。

 そこに幼女が存在する限り。永遠に、だ。



 そうして私の分とアドの分を大量に購入してお店を後にする。

 結局メドは買わなかったけど、それは私が買ったから大丈夫。


 今夜は部屋中に女児パンツが乱舞する「パンツパーティー」開催だ。


『ゲフフフフっ――――』


 私は一人ホクホク顔でメドの手を握りぶんぶん振る。


「何かフーナさま嬉しそう?」

「ま、まぁねっ! 可愛いのいっぱい買えたしねっ!」 


 そんな事をメドと話していると、歩く先から悲鳴や怒号が聞こえてくる。


「うわっ――――今度はドラゴンが現れたぞぉ――――っ!!!!」

「ド、ドラゴンだってっ!! ロックバードがいなくなったのにかっ!」

「みんな、に、逃げろぉ~~~~っ!!」

「うわぁ~~~~っ!!」


 突然の事に、街中の人たちが大声を上げ逃げ惑う。


 建物の中に避難するものや、門に向けて駆けだすもの。

 我先にと人々を押しのけるもの。

 子供を抱いたまま固まるもの。

 諦めて立ち竦むもの。



「メ、メド、アドも、ドラゴンだってっ!」


 私は手を繋いだままの二人に呼びかける。


「………………」

「………………」


 そんな二人は上を見たまま呆然としている。


「メドっ? アド?」


「エンド」

「………………」


 メドはそう言って自分の体を抱きうずくまる。

 アドは言葉こそ発せないが、メドと同じく


「~~~~っ!」


  震えている。


 それを抑えようとメドは体を抱いてるけど抑えられないらしい。

 アドは立ち竦みながら震えている。それから目を離せずに。


「エンドって、あのドラゴン『END』なのっ!?」


 私は目を凝らし、空に目を向ける。


 そこには上空を旋回している巨大なシルエットが目に映る。

 逆光で分からないがその色は漆黒の様に見える。



 『グウオォォォォッ――――ッッッ!!!!』



「わっ!?」

「きゃっ!」

「がうつ!?」


 私たちに影を落としながら漆黒のドラゴンが咆哮する。


 ビリビリと大気を震わせ、その振動が私たちまで届く。

 立ってる地面さえ揺れているように思える。


「エンドがワタシとアドを呼んでる……」

「………………」


 メドが立ち上がりまた上空に目を向ける。


「呼んでるって何っ!? メドとアドを取り返しに来たのっ?」


 私は慌ててメドに確認するが、その姿はさっきよりも


 誰もがひと目で分かる程に怯えていた。

 小さな体がより細かく震えていた。

 カチカチと歯も鳴らしている。


「フ、フーナさま、ワタシ…………」

「メド姉ちゃん、俺…………」


「行かせないっ!」


「フーナさま?」

「フーナ姉ちゃん?」


「わたしが絶対に行かせないし、アイツも生かせないっ! メドとアドを怖がらせるならわたしが退治してやるっ! わたしが絶対に守ってメドとアドを渡さないっ!!」


 怯える二人を見てそう決断し宣言する。


「それじゃ、ENDとはわたし一人が戦うから、二人は混乱する街の人たちをお願いねっ! これは主人の命令だよっ!!」


 私は二人にそう言い残し『ふらい』を唱えてENDに向かう。


「フ、フーナさまっ!」

「フーナ姉ちゃん……」



 本当にENDが私たちの敵かどうか分からない。

 それでも女神の願いの一つになっている。


 どのみち、あれが本物のENDだったら私には選択肢はない。

 敵味方関係なく倒さなければならない。


 いや、そんな事よりもっと大事な理由がある。


「メドとアドがあんなに怯えるんだ。だからなんとかしなきゃダメだっ!」


 そう強く心に決めて、私はENDに向かって行く。

 二人の笑顔と心を守るために私は戦うんだ。


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