この勇者、転生したけど女神の部屋から出ようとしません

尾上遊星

第1話、部屋から出た。そして、知らない部屋

「はい、こんちはー。ユーチューバーのピカキンでーす」


薄暗い部屋の中。

パソコンからは動画が流れる。


俺は、ただひたすらにそれを眺めながらポテチを食べる。


ポテチはもっぱらコンソメパンチ。


学校には行ってない。


新学期のクラス替えでゴミみたいな奴らと一緒になったばっかりに、俺は学校そのものが恐くなった。


それからは学校には行かず、動画観てポテチ食って寝て、また動画観てポテチ食って寝て、たまにゲームしてマンガ読んでポテチ食って寝る。


そんな生活も三ヶ月。


時間が経つのはあっという間で、何もしてなくても‥

いや、何もしてない方がすぐに時間が経つことに気づいた。


そうして、引きこもり生活三ヶ月目の今日7月7日も動画観てポテチ食って‥‥っとポテチもうねーや。


「しゃーねー‥‥取ってくるか」


そう言って、俺は部屋の扉を開けた。


今は朝の10時20分。

母親は仕事にいってる時間だし、父親は元々いない。


つまり、誰もいないから冷蔵庫まで行くのも安全ということだ。


そうして一階の台所まで向かう為、階段を降りていく。


スタスタ、スッカッ‥‥

階段をスカッと一段踏み外してしまい体勢が後ろへ傾いてしまう。


「ヤバッ‥‥」







「ってー‥‥」

と自分の後頭部を擦る。


しかし、すぐに首を傾げる。

「あれ、痛くねーぞ‥」


そして、真っ暗な空間に自分がいることに気づきキョロキョロと辺りを見渡す。


「って、どこだここ!!つーか寒っ!!」


ブルブルと震えながら両腕を合わせ暖を取ろうとしたが、そんなの無駄なくらいに寒い。


この寒さで半袖、短パン姿はキツい。

キツ過ぎる‥‥


「フフフ‥やっと気づいたわね。笹瀬川サクト」


その声が聴こえた瞬間、真っ暗な空間にパッとスポットライトが照らされる。


スポットライトが照らす先には、赤髪ツインテールの幼女がピンクのフリフリスカート姿で立っていた。


「なんだお前?てかそんな格好で寒くねーの?」


「全然寒くなんてヴィクション」


盛大なくしゃみをする幼女。


「ちょっとクーラー利かしすぎたわね‥」


そう言ってピピッとクーラーのリモコンを操作する幼女。

やっぱり寒かったようだ。


「で、ここどこだよ?てか誰?」


「フフン。良くぞ訊いてくれたわ」


幼女は待ってました、と目を輝かせ「ここは死後の世界よー」と、ふざけたことをぬかした。


「死後の世界?‥‥

はぁ!?って俺死んだん?えっ、いつ?いつ?」


動揺のあまり、幼女の肩を掴んでユサユサと揺らしながら質問攻め。


幼女は揺さぶられ過ぎて「ふわぁーー」と泡吹いていた。


「おちちゅけっ‥‥うっ、とりあえず落ち着け」


幼女がそう言うので、とりあえずユサユサを止める。


「サクトは階段を踏み外して死んだのよ!!」


フフン。とか言いそうな顔で言うのでまた肩を掴んでユサユサと揺さぶった。


「階段踏み外して死んだとか落ち着けるかー」


更に揺さぶりを強める。


「やっ、やめれーー‥‥」


それでも止めない。

なぜかって言われると‥‥‥‥なぜだ?

自分でも良く分かってはなかった。


「きゅー‥‥」


あっ、ヤベッ。

揺さぶり過ぎて幼女はげっそりして、赤いツインテールが燃え尽きて真っ白になっていた。




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