中高女子校で脳内お花畑になったら男性がみんな恋愛対象になってしまいました。

@tanonnon

第1話 最高の生活

「先輩、もう卒業なんですね…」


午後5時。

理科室のカーテンが揺れる。

グラウンドでテニス部の声がひびくのが聞こえる。


可愛いボブヘアがふわっと揺れ、ちーちゃんの頭がコテンと私の肩に乗った。


「おれ、ちーちゃんと離れるの、さみしいな。」


「ほんとに?ほんとにそう思ってくれてますか…?」



茶色がかったまるい瞳がうるっと光り、私の視線をとらえる。

ちーちゃんは2つ下の学年でも有名な、某アイドルグループのセンターと姉妹と言っても信憑性があるくらい可愛らしい見た目を持ち、そして純粋で素直な性格の、最高の後輩だ。


その後輩が、自分の卒業を前にこんなにも甘えてきてくれている…


「当たり前じゃん…おれが嘘つくと思うの?」


ちーちゃんの顔を両手ではさみ、くいっと自分に近づける。

彼女の顔がみるみるうちに紅潮し、そらしたいけどそらせない瞳を、どうすればいいのかわからないという風に伏せる。



「…かわいい。」


「…先輩…なんか、恥ずかしい…」


ボールの音を聞きながら、ちーちゃんの頬を撫でる。

柔らかい頬を触っているうちに、その横にある小さな可愛い耳たぶに手が触れてしまったようで、ちーちゃんがビクッと身体を震わす。その様子がたまらなくて、そっと何度もそこを往復する。



「先輩…っ」



(これは…いけるかもしれない…)




ごくり、と喉を鳴らして、その手でそっと首筋をなぞり、ちーちゃんのセーラー服の襟の、その下を触ろうとしたとき、





リリリリリンッ リリリリリンッ



ちーちゃんのiPhoneが鳴る。


「あ!!ごめんなさい、彼からかも。今日デートなんです!」






そのあとは一瞬だった。にこにこしながらiPhoneをとり、身だしなみを整えたちーちゃんは、ケロっとした顔で出口に向かう。



「こんなにかっこいい先輩がいてくれて、女子校なのにとーっっても楽しかったです!また遊んでくださいねっ、みさと先輩!」





バタバタバタバタ…




「ちーちゃん、彼氏、いたんだ…」




呆然としながら、行き場のない思いをしまって、

自分のセーラー服を整える。



こうしてわたしは、思春期の欲求をこじらせながら胸にかかえたまま、高校を卒業した。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

中高女子校で脳内お花畑になったら男性がみんな恋愛対象になってしまいました。 @tanonnon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ