四季の栞
森れお
秋
第一話 ご飯
第一話は四季を通じて食卓に上がるご飯の話です。
ここで言うご飯とは白米のことを指しています。
私は以前まで白米自体をさほど美味しいと感じたことがありませんでした。
唐揚げと食べたり、塩をふって海苔を巻いてお握りにしたり、鶏やお揚げさんと炊き込んで初めて美味しいものと思っていたのです。
しかし、ある日祖母の家で食べた白米が美味しくてびっくりしました。
水分をたっぷりと吸っていて、芯がなくて柔らかい。
そして甘い。
我が家の米は祖母の家から貰っているので全く同じ物を使っていますが、全く別物に仕上がっていました。
祖母に聞いてみると、上等な炊飯器に買い変えて、蒸らし時間もきっちりと計っているとのことです。
欲しい、この炊飯器。
この米、毎日食べたい。
しかし、我が家には私が一人暮らしをしていた時から愛用している、十年物の三号炊きの炊飯器が現役で働いています。
愛着もあるので捨てるのは忍びないですし、狙っている炊飯器はお高いですし。
そこで土鍋を買おうかと思い付きました。
以前職場の同僚が土鍋でご飯を炊いたら戻れなくなると言っていたのです。
しかし、これ以上鍋を収容するスペースは我が家にはありません。
そこで思い出しました。
バーミキュラという鍋です。
結婚した際に母が買ってくれたのですが、大きくて重いのでなかなか使う機会がありませんでした。
確か米も美味しく炊けた筈だと、ネットでレシピを探し作り始めました。
米をいつになく丁寧にとぎ、水を計量して米を浸して三十分待つ。
そうしたら最初は強火で、吹き零れが見えたら極々弱火にして待つ。
時間になったら最後に数秒強火にして火を止め、十分また待つ。
面倒だと思っていた作業も、やってみると美味しい米への期待から心踊る時間となりました。
出来上がった白米は理想に近いものでした。夫は旅館で食べるご飯に似てるとも言っていました。
しかも、冷めても美味しいのです。
ル・クルーゼの鍋でも試してみましたが、バーミキュラの方が断然旨味があります。
以来、我が家では面倒な時を除いては鍋ご飯なのです。
(了)
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