十一、
私はついに起き上がることさえ困難になり、食べ物も体が受け付けなくなっていた。毎日同じ天井を見上げて、どうしてこんなことになったのか、考え続けた。検査しても原因が分からなかったのだから、考えても仕方なかったのだが、もうそれぐらいしか考えることがなかったのだ。
「私の人生なにか間違ってたのかな…」
少し弱気になると、すぐに涙が出るようになっていた。私の体は段々とやせ細り、例えるなら。まさに骨と皮。先生も看護師さんも私を直視するのが辛そうだった。
ある日の夜中、私は急に息苦しくなった。すぐにナースコールのボタンを押して、助けてくださいともうかすれた声しか出なくなっていたが、懸命に訴えた。すぐに看護師さんが来てくれたが、慌てて、
「先生を呼んできます!」
と言って、どこかへ行ってしまった。まだ死にたくない。私にはまだ助けなければいけない人が沢山いる。きっと私の力を必要としている人が沢山いる。そんな人たちをもっともっと救っていかなければならないのに。
「私はまだ死ねないのよ!」
声にならない声で叫んだ。すると、先生が走って駆けつけて来て、私は集中治療室へと運ばれた。ピーッ、ピーッ、ピーッ。私の心臓はまだ動いている。良かった。安堵した。そしてそのまま深い眠りについた。
先生は言った。
「午前三時四十六分です」
私は深い眠りについたのではなかった。ついに私は、命を落としてしまったのだ。私は私を見つめていた。死んだ瞬間から、私はふわふわと浮いていた。先生たちが泣き崩れるのをぼーっと見つめていた。そう、私は成仏できなかったのだ。
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