第11話るるかと処女

 タンクトップとハーフパンツに着替えて戻ってきたヨヨは両手で缶ビールを何本も抱えていた。

「飲まなきゃやってられないっしょ! るるかも付き合ってよね!」

「ごめん、私まだ未成年だから、ビールはヨヨだけで飲んで。私は麦茶とかでいいから」

「私だってアンタと同じ未成年だっての! 私の傷心の責任とって付き合いなさいって言ってるの!」

 困ったことに私はまったく責任を感じる立場にいない気がしたけれど、ヨヨの剣幕におされて一本だけ付き合うことに了承してしまった。

 ヨヨは意外にアルコールは弱いらしい。ソファに座る私たちの足元には、既に五本の空き缶が転がっている。私はまだ一本目をちょびちょび飲んでいる。

 酔っぱらったヨヨは父親の話をたくさんした(父親が資産家であること、母親は父親に愛想をつかして家を出てしまったこと、など)。

「でねー、もう親父がねー、言うんだよー、泥酔してなー、『お前の母さんは、本当に美人で優しい人だったんだ』って。途中から泣き出しちゃってさ、それ、娘に話すことなのかよ、って。じゃあちゃんと引きとめとけって話だろー? なー。笑えるだろー、るるかー、なー?」

「ヨヨってファザコンだったんだね。意外」

「なにいってる。女子はみんなファザコンだっつうの!」

「うーん。違うと思うよー」

 ヨヨは六本目のビールの残りを勢いよくあおると、空き缶をその辺に転がして七本目を開封した。

「るるかって、処女?」

「うん。処女だよ」

「こういう話題に即答するとこ、そういうとこだぞー、るるかー。お前の、そういうとこだぞー。……あのさ、こんなこといきなり言われたら、イメージと違うって驚かれるかもしれないけどさ、実はさ……私、処女なんだよね」

「うん。だろうねー」

「……男の人と付き合ったこととかなくてさ、興味はあるんだけど、でも複雑なんだよね。私の作品の話って、ほとんどしたことないよね。あれ、そもそもるるかって、私の作品ひとつも観たことないんじゃないの?」

「そんなことないよ。ひとつだけ観たことあるよ。ほら、夏休み明けに校庭に大きな雪像を作ったでしょ? あれはさすがに観たよ」


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