プルンワールド

モモスガ

序章 巨大原子力ロボット

建宇(けんう)5年8月15日…それは人類にとって忘れられない1日となった…

北西に位置するカンレカン連合に所属する小国マキレアが核兵器による攻撃で消滅したのだった…

「天ノ川…これで良かったのか?…」

柔らかいが力強い女性の声が、アラート音が響く整然と整いつつもフォーミュラーカーの様なコックピット内の前方に固定された青年にむけられた。

「……次元回廊が作動しなかった…対消滅できなかった…せめて放射能汚染を最小限に抑えるプルトニウムリムーバーを打ち込もう…」

天ノ川と呼ばれた白髪の幼い顔の青年は、悲しげだが事務的に声の主、天ノ川の右後方に固定された村雨佐奈緒に答えた。

「村雨、天ノ川、俺達も速く撤収しないと被曝してしまうぞ!」

少し語気を強めて、天ノ川祇王の左後方に位置する場所で初老の男が二人を急かした。どうやらコックピットはトライアングル状になっており、三人はそれぞれに固定され各々与えられた操作を忙しくしながら話していた。

「御子神…皇天楼のジョイントマニューバの負荷を安定させられるか?」

白髪の青年は事務的に御子神双衛に伝えた。

ドロドロに溶けた広大な地面の数百メートルの上空で全長50メートルに達するほど巨大な東洋の神々の様な意匠のロボットが巨大キノコ雲の周囲と超高温の熱風に晒されながらも揺らぐ事なく、跡形もなくなったマキレアの大地を、12対の瞳で悲しげに見下ろしていた…

「これは夢なのかな?…私の中に映画みたいな話がいっぱい流れ込んでくる…」

真円のカプセルが液体で詰まった中で全裸の少女は不思議そうに思った…

「ああ…でも…これは私なんだ…感覚も実感もないけど、私の体なんだ…核動力人型殲滅機…名前は皇天楼?…何それ?…プルトニウムがエネルギー源?…よくわからないけど、体の名前は難しいからプルンと呼ぼうかな?…」

全裸の少女はなんとなくだが、理解していた。

少女の頭部には頭髪は無く、網目状の薄いティアラの様なヘルメットと網目の状の隙間から細い配線が頭髪の代わりの如く生え揃っていた。

「私のプルンを三人の人達が上手に使ってくれてる…感覚も実感も無いけど、私の体は疲れていない…」

少女は自分では動かせ無い体を負担なく使う三人に感謝していた…

「なんて事なの?…私のせいだわ…私の気持ちが、プルンに流れ込んでしまったせいで…三人の邪魔をしてしまった…こんな事に…私…怖かったの…すごく怖かったの…ごめんなさい…本当にごめんなさい…」

少女の閉じられたまぶたから涙が溢れたが液体に混ざり消えていった…


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