モルダウ居館の特別看護


「コルネリア様、治りがおもわしくないというだけで、手はもう付いていますし……」

 しかしコルネリアは、ポロポロと涙が止まらない。


「ヴィーナス様が……ヴィーナス様が……」

「コルネリア様!しっかりしてください!」

 オルガに一括されて、コルネリアはやっと我に返った。


「ごめんなさい、で腕は完治するのですよね!」

「長引くようですが、治るとのことです、今では動くまでになっておられますが、かなり痛そうなので……」

「お可哀そうに……」


「コルネリア様、私になにか?」

「いえ、後でもいい話しですし……」

「おっしゃってください。」


 コルネリアは考えをいってみた。

 オルガはすこし考えたようだが、

「アンリエッタ総長に相談してみなければ」

 との返事だった。


 とにかくその日はそれで終わり、コルネリアはヴィーナスの件を他の三人に話し、エラムで信仰される神、黒の女神に皆で治癒を祈った。


 ある日、アンリエッタ総長がやってきて、コルネリアの案を了承したと伝えられた。

 アンリエッタ直々に来るという事は、ほかの用件があるということである。


 アンリエッタは、ヴィーナスの首席女官長、いわば四人の上司にあたる存在である。

「明日、ヴィーナス様がお越しになる、コルネリアの案をお聞きになりいたく喜ばれ、また無事に戻ってくるとの約束を守りたいとの、御希望であられる。」


「ハウスキーパーのサリー様が、明日より四日、モルダウ居館で過ごせるように調整された。」

「オルガより聞いたと思うが、ヴィーナス様には休養が必要であられるので、公務は第一野戦病院の視察だけとなる。」

「四人の夫人は、その間ヴィーナス様のお側に侍り、看護などするように。」


「すこしお聞きしてよいでしょうか?」

 と、シャルロッテが聞いた。


「ヴィーナス様の看護で、注意することをお教え下さい」

「ヴィーナス様はあのような方、黙っていれば、お一人で何でもしようとされます」


「しかしお手は、まだ治りきっておらず、動かすとかなりの激痛だと聞いています」

「お食事、お着替え、おトイレに至るまで、なるべくお手を使わせないように、無理をすると、どんどん治りが遅くなりますので」


 その夜、四人は打ち合わせを念入りにして、明日に備えた。

、四人とも何故か、嬉しそうな顔である。


 ヴィーナスがやってきた。

 思ったよりも元気そうだが、時々顔をしかめている。


 四人は食事になると、ヴィーナスの口に食べ物を、スプーンなどで運び食べさせた。

「ヴィーナス様、はい、お口を開けてください」


「いえ、一人でできますから。」

 恥ずかしそうなヴィーナスに対して、

「手を使わせる訳にはいきません!」

 あきらめたのか、ヴィーナスは可愛い口を開いた。


 万事がこの調子、

「お着替えをいたしますよ」と、ヴィーナスの服を脱がせるわ、トイレなどは、真っ赤になるヴィーナスの下着を脱がせ、さらに、丁寧に拭いて……


 お風呂などは、四人でヴィーナスの服を脱がせ、石鹸なでヴィーナスの身体をすりすりと……隅々まで洗い……

 

 そして夜が来ると……

 夜毎、モルダウ居館では、ヴィーナスの色っぽい声が、四日に渡り響いていた。


 コルネリアは満足している、ヴィーナスの色っぽい姿が見られて……

 そして四人は、次のヴィーナスの来る日を待ちわびている。


 なお、コルネリアの計画は市民には好評で、モルダウの寵妃は国民にますます愛される存在になったのを、一言付け加えておく。


    FIN


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