第50話
なんで付き合っている時は上手くいかなかったのだろうか?
俺は由羽と話しをしながら、そんな事をかんがていた。
「ねぇ、次はどこ行くの?」
「あぁ、近くのショッピングモールでも行こうぜ、買い物したいっていってたろ?」
「うん、じゃあ食べたら行こうか!」
俺たちはそんな話しをしながら、食事を済ませて近くのショッピングモールに向かった。
*
僕は朝の早い時間に、駅前の噴水の近くに隠れていた。
「はぁ……なんでこんな事に……」
「由羽ったら遅いわね……」
理由は簡単。
白戸さんに付き合って、今日は湊斗と藍原さんのデートを付けて回るからだ。
白戸さんは何やらノリノリな様子で、物陰から湊斗の様子を覗き見ていた。
「はぁ……本当にやるの?」
「もちろんよ! どうせ家に居てもやること無いしね!」
「もっと別な事をしようよ……」
僕はため息を吐きながら、白戸さんにそんな話しをしていた。
はぁ……二人で会うのがこんな形で無くて、湊斗達みたいなデートだったらな……。
「あ! 由羽が来たわ!!」
「本当だね……あっ! 手を握った!」
「あらぁ~なんだか良い感じねぇ~」
「藍原さんも本気って感じだね」
「そりゃそうよ! 相手は強敵だもの!」
相手とは清瀬さんの事だろう。
確かに清瀬さんは綺麗だし、男子からの評判も良いらしい。
大人っぽくて、落ち着いている雰囲気が良いらしい。
なんでも、責任感も強くて女子からも信頼されているらしい。
そんな子に藍原さんが勝てるのか、一時期心配だったけど、最近は素直になり始めてるみたいだし……この勝負、どうなるか分からなくなってきたな。
「あ! 移動するみたいね……追いかけるわよ!」
「はいはい」
僕は白戸さんの後に続いて湊斗達を追う。
「確か最初は水族館よね?」
「うん、そうだよ」
湊斗の今日の予定は僕がこの前聞き出していた。
まぁ、デートコースを考えるの手伝ったのも僕だったりするんだけど……。
僕たちは湊斗達から少し離れて歩き、気がつかれないように注意しながら、二人を付けて回った。
「え! 入場料って結構するのね……」
「あぁ、良いよ。僕が出しておくから」
「え!? そ、そんなの悪いわよ」
「良いって」
まぁ、確かに湊斗達を追っては居るけど、実質デートみたいな感じだし……ここは僕が出して置こう。
「それはダメよ! 今度必ず返すわ!」
「気にしなくて良いのに……」
「私は友達と金銭でトラブルになるのが嫌なの!」
そう言いながら白戸さんはチケットを受け取って、水族館の中に入っていく。
「うわぁ~凄いわねぇ……この水槽!」
「大きいねぇ……そう言えば白戸さんって、水族館初めて?」
「えぇそうよ……凄いわね……サメも居るなんて」
「ここは結構有名だからね……そろそろ次に行く?」
「うん!」
完全に湊斗達の事を忘れてるなぁ……。
まぁでも……こんな笑顔の白戸さん見てたら、そんな事も言えないな……。
「へぇ……こんな小さな魚が海に居るなんて……」
「あっちは川魚だって」
「そう言えば、海の魚と川の魚って何か違うのかしら?」
「確か水の塩分の違いで生きていけるかどうかが決まってたような? 僕も良く覚えてないけど」
「焼いたらどっちが美味しいのかしら?」
「あぁ、食べる方の違い?」
白戸さんって、少し食いしん坊なところあるからなぁ……それであのスタイルなんだから、どこに食べた物が入っているのか不思議だ。
「深海魚ね……なんか特徴的な感じね」
「少しグロテスクな深海の世界って説明に書いてあったけど、本当だね」
「そう? 私はチョウチンアンコウとか結構好きよ」
「え……」
意外な趣味を発見してしまった気がする。
「あ、もう深海コーナー終わりね……次は外か……え!? カピバラが居るの!!」
通路に張り出されてあった張り紙を見て、白戸さんは嬉しそうにそう言う。
カピバラが好きなのだろうか?
やっぱり女の子だな……。
「見に行きましょう!」
「え! あ……うん」
白戸さんはそう言って、目をキラキラさせながら僕の手を引く。
なんかこれ……もう普通のデートみたいだな……。
最初はあまり来たくなかったが、今は来て良かったと感じる。
「あ! カワウソも居る! 可愛い~」
「あっちにはペンギンも居るよ」
「あぁ~可愛い~……なんか癒やされるわねぇ……」
「それは良かった」
僕は僕で、そんな彼女の嬉しそうな顔を見ると癒やされる訳で……。
「ん? そう言えばなんか……大切な事を忘れてない?」
あ、そろそろ気がついたかな?
ここは言って上げるべきかな?
でも……僕はもう少しこのままが良いな……。
だから僕は、彼女にこう言った。
「さぁ、気のせいじゃない?」
「そうよね! さ、早くペンギン見にいきましょう! 写真撮りまくるから!」
「はいはい」
まぁ……これくらいの嘘なら、神様も許してくれるよね?
僕はそんな事を考えながら、白戸さんと共にペンギンを見に向かった。
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