第50話


 なんで付き合っている時は上手くいかなかったのだろうか?

 俺は由羽と話しをしながら、そんな事をかんがていた。

 

「ねぇ、次はどこ行くの?」


「あぁ、近くのショッピングモールでも行こうぜ、買い物したいっていってたろ?」


「うん、じゃあ食べたら行こうか!」


 俺たちはそんな話しをしながら、食事を済ませて近くのショッピングモールに向かった。




 僕は朝の早い時間に、駅前の噴水の近くに隠れていた。


「はぁ……なんでこんな事に……」


「由羽ったら遅いわね……」


 理由は簡単。

 白戸さんに付き合って、今日は湊斗と藍原さんのデートを付けて回るからだ。

 白戸さんは何やらノリノリな様子で、物陰から湊斗の様子を覗き見ていた。


「はぁ……本当にやるの?」


「もちろんよ! どうせ家に居てもやること無いしね!」


「もっと別な事をしようよ……」


 僕はため息を吐きながら、白戸さんにそんな話しをしていた。

 はぁ……二人で会うのがこんな形で無くて、湊斗達みたいなデートだったらな……。


「あ! 由羽が来たわ!!」


「本当だね……あっ! 手を握った!」


「あらぁ~なんだか良い感じねぇ~」


「藍原さんも本気って感じだね」


「そりゃそうよ! 相手は強敵だもの!」


 相手とは清瀬さんの事だろう。

 確かに清瀬さんは綺麗だし、男子からの評判も良いらしい。

 大人っぽくて、落ち着いている雰囲気が良いらしい。

 なんでも、責任感も強くて女子からも信頼されているらしい。

 そんな子に藍原さんが勝てるのか、一時期心配だったけど、最近は素直になり始めてるみたいだし……この勝負、どうなるか分からなくなってきたな。


「あ! 移動するみたいね……追いかけるわよ!」


「はいはい」


 僕は白戸さんの後に続いて湊斗達を追う。


「確か最初は水族館よね?」


「うん、そうだよ」


 湊斗の今日の予定は僕がこの前聞き出していた。

 まぁ、デートコースを考えるの手伝ったのも僕だったりするんだけど……。

 僕たちは湊斗達から少し離れて歩き、気がつかれないように注意しながら、二人を付けて回った。


「え! 入場料って結構するのね……」


「あぁ、良いよ。僕が出しておくから」


「え!? そ、そんなの悪いわよ」


「良いって」


 まぁ、確かに湊斗達を追っては居るけど、実質デートみたいな感じだし……ここは僕が出して置こう。


「それはダメよ! 今度必ず返すわ!」


「気にしなくて良いのに……」


「私は友達と金銭でトラブルになるのが嫌なの!」


 そう言いながら白戸さんはチケットを受け取って、水族館の中に入っていく。

 

「うわぁ~凄いわねぇ……この水槽!」


「大きいねぇ……そう言えば白戸さんって、水族館初めて?」


「えぇそうよ……凄いわね……サメも居るなんて」


「ここは結構有名だからね……そろそろ次に行く?」


「うん!」


 完全に湊斗達の事を忘れてるなぁ……。

 まぁでも……こんな笑顔の白戸さん見てたら、そんな事も言えないな……。


「へぇ……こんな小さな魚が海に居るなんて……」


「あっちは川魚だって」


「そう言えば、海の魚と川の魚って何か違うのかしら?」


「確か水の塩分の違いで生きていけるかどうかが決まってたような? 僕も良く覚えてないけど」


「焼いたらどっちが美味しいのかしら?」


「あぁ、食べる方の違い?」

 

 白戸さんって、少し食いしん坊なところあるからなぁ……それであのスタイルなんだから、どこに食べた物が入っているのか不思議だ。


「深海魚ね……なんか特徴的な感じね」


「少しグロテスクな深海の世界って説明に書いてあったけど、本当だね」


「そう? 私はチョウチンアンコウとか結構好きよ」


「え……」


 意外な趣味を発見してしまった気がする。

 

「あ、もう深海コーナー終わりね……次は外か……え!? カピバラが居るの!!」


 通路に張り出されてあった張り紙を見て、白戸さんは嬉しそうにそう言う。

 カピバラが好きなのだろうか?

 やっぱり女の子だな……。

 

「見に行きましょう!」


「え! あ……うん」


 白戸さんはそう言って、目をキラキラさせながら僕の手を引く。

 なんかこれ……もう普通のデートみたいだな……。

 最初はあまり来たくなかったが、今は来て良かったと感じる。


「あ! カワウソも居る! 可愛い~」


「あっちにはペンギンも居るよ」


「あぁ~可愛い~……なんか癒やされるわねぇ……」


「それは良かった」


 僕は僕で、そんな彼女の嬉しそうな顔を見ると癒やされる訳で……。


「ん? そう言えばなんか……大切な事を忘れてない?」


 あ、そろそろ気がついたかな?

 ここは言って上げるべきかな?

 でも……僕はもう少しこのままが良いな……。

 だから僕は、彼女にこう言った。


「さぁ、気のせいじゃない?」


「そうよね! さ、早くペンギン見にいきましょう! 写真撮りまくるから!」


「はいはい」


 まぁ……これくらいの嘘なら、神様も許してくれるよね?

 僕はそんな事を考えながら、白戸さんと共にペンギンを見に向かった。

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