第44話

「うぉ! な、なんだ?」


「うわぁ! また大当たり!! 9999枚だって!!」


「これ消費出来ないんじゃ……」


 大量に出て来るメダルを集めながら、俺はそんな言葉を呟く。

 凄いな……今日はかなりついているようだ。 もう今日一日では使い切れない程のメダルを稼ぎ、俺たちはメダルゲームをやめた。


「凄いな……まさかこんなに増えるとは……」


「え? いつもはこんない増えないの?」


「直晄と来ても100円分のメダルでもって三十分かな? 清瀬……じゃなくて、い…彩葉さんセンスあるんじゃない?」


「あ、いま清瀬さんって言いかけた」


「うっ……だ、だから慣れないんですよ!」


「うふふ、冗談よ。まだ慣れないわよね? 無理しなくて良いから、少しづつなれてね」


 笑顔でそう話してくる彩葉に俺は頬を赤く染める。

 やっぱりこの人……すげー可愛い……しかも話してて楽しいし……なんか不思議とあんまり緊張もしない。

 俺たちは稼いだメダルを店に預けて、次はクレーンゲームコーナーに向かった。


「クレーンゲームも色んな形式のがあるんだねぇ~」


「爪で引っかけて落とすやつとか、ボールを穴に入れるやつとか、色々あるよね……実は俺得意だったり」


「えぇ~? 本当?」


「あ! 疑ってるな! なら証明して見せようじゃないの!」


「あんまり無理しなくて良いからね、無駄使いはダメだよ?」


「まぁ、任せてよ!」


 俺はそう言いながら、クレーンゲームの台の前に立つ。

 狙うはクマを模したゆるキャラのぬいぐるみだ。

 正直可愛いとは思わないが、さっきから彩葉が見ていたし、気になっていたのだろうな。

「えっと……どうなってるのか……」


 俺は台の中を見回しながら、どうやってぬいぐるみを取るかを考える。

 これなら、ぬいぐるみを一回起こして、タグに爪を引っかければ行けるかな?


「よし、まずは100円で」


「大丈夫?」


「うん、多分200円でいける」


「本当にぃ~、そんな事を言っちゃって大丈夫?」


「うん、多分ね……」


 俺はアームを動かし、まずはぬいぐるみの頭を掴んで状態を起こそうとする。


「よし! 上手くいった!」


「え? 起き上がっただけだよ?」


「それで良いんだよ、見てて」


 俺はもう100円を入れて、再びクレーンゲームのアームを動かす。

 ぬいぐるみについているタグを狙い、俺はアームを動かす。

 

「よし! 良い感じの位置だな……あとは上手く引っかかってくれれば……」


 俺がそう思っていると、クレーンのアームの爪はぬいぐるみのタグに引っかかった。

 

「よし! 取れた!」


「え? 嘘!?」


 ぬいぐるみはそのままアームの爪に引っかかって持ち上がり、そのまま取り出し口に落下した。


「おぉ! 本当に取れた!」


「だから言ったでしょ……はい、あげる」


「え? 良いの?」


「良いも何も、その為に取ったんだし。俺は要らないから」


「ありがとう!」


 俺がそう言うと、彩葉は満面の笑みで笑いながら、ぬいぐるみを受け取った。


「ほらな、得意だろ?」


「以外だったなぁ~。取れなくてムキになって、何千円も使うのを想像してたのに」


「本当に信じて無かったんだ……直晄とかと良く来るから得意になったんだよ」


「へぇ~、デートでこんな簡単に景品取るなんて……女の子からしたら得点高いよ」


「それは嬉しいな」


 俺と彩葉はそんな話しをしながら、ゲームセンターを後にした。

 メダルゲームに夢中になっていたせいか、時間があっという間に過ぎていた。

 もう夕方でそろそろデートも終わりの時間だ。


「どうだった?」


「え? 何が?」


「ん……私を彼女にしたくなった?」


「ぶっ!! な、何を急に!」


 公園のベンチで先程買った飲み物を飲んでいると、彩葉が急にそんな話しをしてきた。


「ごめんごめん。でも気になっちゃって……」


「ま、まぁ気持ちはわかるよ」


 そうだよなぁ……気になるよなぁ……。

 しかし、俺の気持ちはまだ決まっていない……だからここで答えを出す事は出来ない。

 我ながら決断力が無いな……。


「ねぇ……少し昔話しをしても良い?」


「え? 急にどうしたの?」


「まぁ、聞いてよ……」


 彩葉はそう言いながら、話し始めた。


「昔、私って結構人見知りが激しい方でさ……あんまり友達がいなくてさ」


「そうだったのか……」


「でも……ある日友達が出来たんだ……男の子だったけど、同じマンションに住んでて……いつも一緒に遊んでた」


「へぇ……その男の子は今何してるの?」


「ん? 私の隣に居るよ」


「え?」


 ん?

 彩葉の隣には俺しか居ないが……まさか……その男の子って……。


「も、もしかして……彩葉って霊とか見える系?」


「そうじゃないよ! もう! 鈍感過ぎない?」


「え? もしかしてその男の子って……」


「湊斗君だよ。まぁ、忘れてても無理は無いよね? 十年以上前の話だし」


 そう言われ、俺は昔の事を思い出す。

 彩葉……そう言えば、最近母さんが言っていた名前も彩葉だったな……。

 

「も、もしかして……あの泣き虫の?」

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