第37話

 俺は母さんを怒鳴って部屋の外に追い出し、再びベッドに寝転がった。


「はぁ……何が青春だよ……面倒なだけじゃないか……」


 俺はそう言いながら、目を閉じた。





「はぁ……もう時間無いかな?」


 私はそんな事を考えながら、一人暮らしの自分のマンションのベッドから月を眺めていた。


「綺麗ね……」


 今日のファミレスの一件でハッキリわかった。

 私の本当の戦いはこれからのようだ。

 いままでのは多分、前座に過ぎなかったのだろう。

 藍原さんがまだ春山君を諦めて居ないことは想像が出来ていた。

 しかし、その事実がこんな早くに春山君にバレてしまうなんて……。


「計算が狂ったわね……でも……負けない」


 私はそんな事を考えながら、スマホの春山君の連絡先を開く。

 

「……絶対負けない」





「なんでこうなるのよぉ~」


 私は自宅に帰り、ベッドの中で丸まっていた。

 先程のファミレスで起きた一件を思いだすと、また顔が熱くなる。

 恥ずかしい……恥ずかし過ぎる……。

 大体芽生も芽生よ!

 なんであそこで言っちゃうのよ!!

 おかげで湊斗とは気まずい感じになっちゃうし……私は明日どんな顔で学校に行けば言いのよ!!


「はぁ……こんなはずじゃ……」


 ひとしきりゴロゴロと転がった後、私はスマホに登録してある湊斗の電話番号を開く。

 何か一言電話しておくべきだろうか?

 なんか、さっきの感じのまま明日教室で会うのも嫌だし……それに……もしかしたら、話しの流れでよりを戻したり……ってそんな上手くはいかないかしらね……。

 私がそんな事を考えていると部屋のドアが二回ノックされた。


「はい?」


「あぁ、由羽。今少し良いかしら?」


「うん、どうしたの?」


 部屋に入ってきたのはお母さんだった。


「春山君なんだけど、バイトの事何か言ってなかった?」


「え……あ、あぁ言って無かったよ」


 そうだ、湊斗は私のお店でこれからもバイトしてないかって誘われてたんだ。

 てか、こんな状況下で一緒に仕事なんて出来るわけないじゃない!

 

「そう? なんかお父さんがあれからずっと聞いてくるのよ、何か機会があったら春山君に聞いてて貰えない?」


「う、うん……良いけど……」


「じゃあ、お願いね」


 お母さんはそう言うと部屋を出て行った。

 聞いてて貰えないって言われても……今は話しをするのも気まずいしなぁ……。

 でも、湊斗少し話しをしたいのも事実だった。

 

「………まぁ、バイトどうするか聞くだけだし……仕方ないわよね?」


 私はそんな事を考えながら、スマホを操作して湊斗のスマホに電話を掛ける。

 しかし、湊斗は誰かと電話をしているようで、電話は湊斗に繋がらなかった。


「電話中かな? それとも寝たのかな?」


 私はそんな事を考えながら、その日は電話をするのを諦めた。

 明日会って話せば良いかしら?

 私はそう考えて、その日は眠りについた。





「ん……ヤバイ、少し寝てたのか……」


 母親を追い払った後、俺はどうやら寝てしまったようだ。

 食事も終わっていたし、後は風呂に入って寝るだけなのであまり問題は無いのだが、変な時間に寝てしまったからか、夜の22時だと言うのにまったく眠くない。


「とりあえず風呂に入るか……」

 

 俺は風呂で汗を流し、寝間着に着替えて部屋に戻った。

 明日も早いし、もう寝てしまいたいのだが、風呂にも入ってしまったので、余計に眠くない。

 眠くなるまでスマホで動画でも見ていようと、俺はスマホで動画を見ていた。

 すると、急に清瀬さんから電話が掛かってきた。


「ん? なんだ?」


 俺は少し考えたあと清瀬さんの電話に出た。 ファミレスの後なので少し気まずかったが、緊急の用事とかだったら大変だと思い、俺は電話に出た。


「もしもし?」


『もしもし……春山君? ごめんね遅くに』


「いや、大丈夫だよ。どうしたの?」


『ん? んっと……ちょっとね……言いたい事があって……』


「言いたいこと?」


 なんだろうか?

 もしかして今日のファミレスの話しだろうか?

 そんな事を思っていると清瀬さんが話し始めた。


『……私、藍原さんに負ける気はないよ』


「え? そ、それってどういう……」


『ん、率直に言うと、藍原さんよりも私の方が春山君の事を好きってこと』


「え? は!? え? な、なにいきなり!?」


『あ、ごめんね。いきなりそんな事を言われても困るわよね……ただ私が貴方にそう言いたかっただけだから』


「そ、そうなの?」


『……ごめん、嘘ついちゃった……私を選んで欲しくて言っちゃっただけ……ごめね……なんか変な事言って』


「い、いや……そ、その……まぁ、今日の事は俺も知らなかったし……そのビックリしたし……」


『うん……私がただ焦ってるだけ……ごめん、全部言うと、春山君の声が聞きたかったの……』


「そ、そっか……ごめん……俺もハッキリしなくて……」


『大丈夫、ちゃんと私を選びたくなるように頑張るから』


「そ、そっか……」


 なんか今日の清瀬さんはストレートに言ってくるな……まぁ嫌な訳じゃないけど……。

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