第12話
「だから、正反対の新しい彼氏を探してるんでしょ?」
「春山君はそこまで最低な男子じゃないと思うけど……」
でも、湊斗に先を越されたのは悔しい。
私も早く次の彼氏を見つけて、湊斗に見せつけてやりたい。
「はぁ……どっかにイイ男居ないかしら……」
「発言が結婚できない女みたいになって来たわね……」
実際、誰でもよかったら相手なんかすぐに見つかる気がする。
でも、誰でも言い訳じゃない。
さっきみたいな贅沢は言わないけど、せめて一緒に居て楽しい人が良い。
「この際大学生とかもありね……」
「接点が無いでしょ」
*
「はぁ……」
「はぁ……」
お昼休みの屋上。
僕、栗原直晄は友人の白戸さんと一緒に外を見ながらため息を吐いていた。
「お互い大変だね」
「えぇ……あんな面倒くさい友達を持っ苦労するわ……」
僕たちはたまにこうやって二人で、湊斗と藍原さんの話しをする。
まぁ、いわゆる近況報告みたいなものだ。
湊斗が藍原さんと付き合っていた時なんかは、藍原さんの情報を白戸さんを通じて僕が聞いて、それを湊斗にそれとなく伝えていた。
「付き合い初めの頃は、初々しくて面白かったけどなぁ……」
「そうよねぇ……由羽も可愛げがあった気がする……」
「なのに……どこで間違えたんだか……」
「本当よね」
こうやって二人で話しをするのも、中学時代から数えて何回目だろうか。
前はどうやったら二人が付き合うのか話し合っていたのだが、今では互いの友人の愚痴しか出てこない。
昔はどっちが告白するかで、二人で掛けたことがあったなぁ……。
「はぁ……あの二人はもうだめなのかな?」
「由羽もなんか新しい彼氏探すみたいな事行ってたし……もう無理かもね……」
「そっか……なんか残念だよ……」
「そうね……昔は二人仲良かったのに……」
「「はぁ……」」
僕たちはため息を吐いて、お互いに顔を見合わせ苦笑いをする。
「はぁ……もうこんな話しもする必要はないか……」
「そうよね……なんか春山君もいい人見つけたみたいだし」
「藍原さんも最近は呼び出しとか多いんでしょ? ならそのうち新しい彼氏も出来るんじゃない?」
「でもあの子……贅沢言いすぎなところあるからなぁ……」
「でも、藍原さん可愛いから、少しくらいの贅沢は通りそうだけどね……」
「ふぅ~ん、もしかして栗原君って由羽みたいな子がタイプなの?」
「そうじゃないよ、純粋にそう思っただけだよ。事実、藍原さんはモテるからね……」
「そう言う栗原君もモテるじゃん」
「そんな事ないよ」
「えぇ~この前は三年生のお姉さんに告白されてたくせにぃ~」
「な、なんで知ってるの!?」
「ふふ~、私の情報網を舐めないでよねぇ~」
「その情報はどこから……」
「ねぇ、なんで断ったの? あの先輩可愛かったじゃん」
「まぁ……あの先輩の事全然知らないし……正直好きでも何でもないし……」
「え~もったいないなぁ~」
「好きでも無い人とは付き合いたくなよ……多分その気持ちは藍原さんも同じだと思う」
「ふぅーん……私はそう言うのわからないなぁ~、私はモテないし……」
「……そうかな?」
白戸さんは可愛いと思う。
顔立ちって悪くないし、スタイルだってほっそりしている。
前に白戸さんの事を好きだと言っていた友人も居たし、決してモテないわけではないと思う。
「まぁ、由羽の心配するより、自分の心配しろって話しだけどね」
「大丈夫だよ……白戸さんもそのうち……」
「ん? そのうち何?」
「あ、あぁいや……いい人が見つかるって言いたかったんだよ」
「いい人ねぇ~……どこかに居るんですかねぇ~」
笑いながら話す白戸さんの横顔を僕は眺めていた。
こうして二人で話しをするようになって二年ちょっと、僕は異性の中では白戸さんと一番仲が良い。
気兼ねなく何でも話せる異性は白戸さんだけだと思っている。
「はぁ~あ……私を残してみんな恋人を作っていくんだろうなぁ~」
「そんな事ないよ、少なくとも僕は……」
「そうやって、私を追い越してすぐに彼女作るくせに~」
「……それは無いよ……僕は本当に好きな人とじゃないと……付き合わないから……」
「ふぅ~ん……もしかして好きな人でも居るの?」
「え! あ、いや……まぁ……」
「え!? 本当!! ねぇねぇ誰々!! 何組? 男? 女?」
「その選択肢はおかしい」
「ねぇねぇ、気になるじゃん! 教えてよ!」
「そ、そのうちね……」
「えぇ~気になるなぁー」
「ほ、ほら、もう授業始まっちゃうよ」
「あ、本当だ!! 早く戻らないと!! 先に戻ってるよね!」
「あ、うん」
そう言うと、白戸さんは走って屋上から去って行った。
僕はそんな白戸さんの背中を目で追いながら、ため息を吐く。
「はぁ……可愛いなぁ……」
僕はそんな事を考えながら、またため息を吐く。
自分の気持ちを伝えるのは難しい。
それが出来た湊斗は僕よりも凄いのかもしれないな……。
「はぁ……湊斗に偉そうな事は言えないのかもな……」
僕はそんな事を思いながら、教室に向かって歩き始めた。
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