第27話

 マーアから食らって雷魔法を習得したはずなので、とりあえず電気を出してみることにした。


 「うーん・・・ほっ!」


 マーアがやっていたようにして、両手をかざして電気をイメージしてみると、ホントに電気が流れた。自分で生み出した電気だからだろうか、全くビリっと来ない。


 「これがホントの自家発電、だな。」


 ふと思いついたフレーズをつぶやくと、それを聞いていたイーギが口を押さえていた。


 「おっ?なんだ、できるじゃねえか。流石は俺が見込んだだけのことはあるな。」


 とマーアが話しかけてきたので、


 「お目が高いな、マーア。」


 と返してやった。すると、


 「お前ら、雷魔法が使えるんだったら、俺達と手を組まねえか?そうすりゃ、お互いに理があるはずだ。」


 とダルブが提案をしてきた。魔法を教えてもらった恩もあるので、引き受けるとするか。


 「そっちがその気なら、俺達は構わないよな、イーギ?」


 「だな。魔法を教えてもら・・・ムグッ!」


 「ん?どうした、シイマ?」


 「いやあ、なんでも。」


 こいつ、口が軽すぎる・・・。


 「それにしても、お前らこそ大丈夫なのか?他の仲間に報告なんかしないで俺達と手を組んでも。」


 「ああ、俺がお前に話しかけられた時にいたヤツらのことか。そいつらなんだが、これに参加する冒険者をちょっと前に集めて、情報交換をしただけなんだ。つまり即興の集団だから、特に深い意味合いはないな。」


 「そうか。じゃあ、乗ったぜ。」


 こうして俺達は、即興のパーティを結成した。




 「おい、いたぞ!こっちだ!」


 「おうよ!」


 パーティで決まった基本方針は、ダルブが索敵を行い、残りの3人でニトログリズリンを各個撃破するというものだった。即興で決めた分シンプルな作戦だったが、シンプルな分、動きに無駄がなかった。


 「ヨイショォ!」


 そう言ってパワーに定評のあるマーアが一本背負いをしてグリズリーを地面に叩きつけると、


 「「オラァ!」」


 という声とともに俺とイーギが雷魔法を放ち、グリズリーの爆発を止めたりもした。俺やイーギが一人で仕留めることもあった。嘘みたいに順調だった。親グリズリーの爆発で他のグリズリーが集まってきたからだろうか、相当な数のグリズリーを仕留めた。


 狩りが一区切りしたところで、マーアが話を始めた。


 「ダルブ、これで何匹だ?」


 「もう数え切れねえよ。これじゃあ、持って帰る方が厄介な敵になってくるな。」


 「いやあ、どうすっかなぁ。またお前らに世話になっちまいそうだな。」


 「礼を言うのはこっちの方だ。お前らがいなけりゃ、今頃俺は消し炭になってたからな。」


 「そーいうわけだ。帰りも俺達に任せな。」


 日も暮れ始めたので、俺達は倒したグリズリーと共に、シノアへ帰ることにした。


 「・・・いや待て。シイマ、お前裸じゃねえか。」


 「ん?・・・ああ、そうだな、ダルブ。」


 「そうだな、じゃねえよ。お前、裸で街に戻るってのかよ?」


 「そりゃマズいだろ。でもまあ、仕方ないか。」


 「仕方なくねえよ。裸のヤローと一緒にいたくねえわ。・・・とりあえず、街境まで運んでくれ。それからは、残りの3人でどうにかする。」


 「おっ、分かった。・・・そうだ!そしたらよ、ダルブ。ついでに服も買ってくんねえか?シンプルなヤツで頼むわ。」


 「分かったよ、シイマ。」


 こうして俺は街境までグリズリーを運び、残りの3人のファッションセンスを待つことにした。




 「待たせたな。ほらよ。」


 そうダルブに言われ、俺は服を受け取り、それを着た。


 「おお・・・。」


 俺は今、異世界の服を着ている。うまく説明できないが、これでやっと異世界の仲間入りを果たした気分だ。やっぱり服って、文化の所属を示す重要なものなんだな。


 「大きさは合ってるか?」


 「ああ、バッチリだ。本当に助かった。コイツに任せたくなかったからな。」


 そう言うと、


 「チッ、つまんねーノ。」


 と言いながら、イーギがイジけた。残念だったな。


 「さて、ニトログリズリンの買取も終わったことだし、打ち上げでもやるか。ついてこいよ、新人。今日は俺達のおごりだ!てか、ぜひおごらせてくれ。」 


 マーアはそう言って、意気揚々に俺達を先導しだした。




 「すまねえな、マーア。またお前におごらせてしまって。」


 「いいってことよ。思った以上に稼げたし、今日は俺とダルブで折半だし。それに、お前らの事情を知っちまったからな。」


 「ん?どういう事情をだ?」


 するとダルブが語りだした。


 「お前ら、借金してんだろ?それも、1000万チャリンもな。」


 「そりゃそうだが・・・。何で知ってんだ?」


 「グリズリーを買い取ってもらう時に、冒険者免許を提示したんだ。それで、受付が驚いてそのことを言ってしまったんだ。救助されたことあんのか、ってな。」


 「なるほど、それでか。それじゃあ、今日の報酬はどうなったんだ?」


 するとマーアが重そうなものが入った袋を取り出して、


 「俺達の分はこうやって支払われたが、お前らの分は全て借金返済に回されちまったよ。」


 「へぇ。そうなんだ。・・・ん?」


 グリズリーを引き渡した時、その場にいたのは俺以外の3人だけ。ってことは・・・。 


 「もしかして、今日の俺達の分の稼ぎは全部、コイツの借金返済に充てられたんだな?」


 すると俺の発言を聞いたイーギが、


 「そういうことになるナ!ありがとヨ、シイマ。」


 と言い、満面の笑みで俺に礼を言った。俺はイーギとをするため、イーギを酒場の裏に連れて行った。

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