第15話

 ドーピング男を倒した俺は、レソの下に駆け寄った。


 「怪我はないですか?」


 と聞いてみた。やっぱり女相手には敬語になってしまう。すると、


 「いえ。特にないですけど・・・。」


 と言われた。あの男どもをヒョイヒョイと倒したからか、豆鉄砲を食らったかのようだった。そして、


 「と、とにかくこの賊を縛り付けましょう!手伝ってください!」


 と言い、縄を手渡された。




 ひとまず賊をキッツキツに縛り付けたあとに、レソはこんなことを聞いてきた。


 「どうしてあなた達はこの森にいたんですか?」


 汚名返上のチャンスと思い、俺とイーギはこれまでの経緯を話した。




 「なるほど。つまりあの評判はデマということですか・・・。」


 「そうなんですよ。俺達、ノーマルなんですよ。」


 「それで、この森に逃げ込んできた、いや、引きこもったんですか。」


 「そうなんだヨ。でもまあ存外楽しいもんだゼ、ガチキャンプってのもナ。」


 イーギがそう言うと、レソは笑い出し、


 「いやいや。やっぱりあなた達はとんだお調子者ですね。」


 と言ってきた。初めて心から笑った姿を見た。なぜか俺が嬉しくなった。


 「やっぱりレソさんは、心から笑ってる姿が似合いますね。」


 と俺がふと本音を漏らすと、


 「そ、そうですかね。」


 とレソが顔を赤らめた。ヤベえよこの人。美しいだけじゃなく、カワイイも兼ね備えてやがる。イーギは腕を組んでうんうんとうなずいていた。コイツ何目線なんだよ。


 すると、


 「レソさあああん!」


 という声とともに、一人の青年がやってきた。シイゼテだった。


 「おっ!シイゼテじゃないか!どうした?」


 「シイマさんとイーギさん?!もしかしてあなた達が・・・!」


 「そうヨ!やってやったってわけサ!」


 「レソさんを誘拐したのか!」 


 そう言うと、シイゼテは剣を抜いて構えを取ってきた。


 「お前、落ち着け!」


 俺とイーギとレソは彼にこの騒動を説明した。  




 「なるほど、そんなことがあったのか。早とちりして申し訳ない。」


 ホントだよ。とばっちりが過ぎるんだよ。


 「何はともあれ、あなた達がいて、本当に良かったよ。レソさんを助けてくれてありがとう。」


 礼を言われたので、俺はそのお返しをもらうことにした。


 「それはいいんだが、一つ頼みごとがあるんだ。」


 「なんですか?」


 「村への戻り方、分かる?」


 「分かるけど、村に戻ってどうするの?」


 こいつは勘が鈍いな。


 「分かるだろ。俺とイーギの疑惑を消すんだよ。」


 「疑惑、ってあのことですか?ホントなんですよね?」


 「「アホかぁ!」」


 俺とイーギは声を合わせ、天然すぎるシイゼテにツッコミを入れた。




 「ほら、着いたよ。久々の村はどう?」


 「長居したくないなぁ。」


 そんな俺の素直な感想を聞いて、シイゼテは


 「ごめんよ。うちの村の住人、何でもすぐ信じちゃうんだ。」


 と言い、ガックリしていた。


 村人の誤解を解くといっても、今はまだ夜中なので、それを行うとすれば明日以降になる。そうなると困るのは、宿問題だ。


 最初に泊まった宿にはあのトラウマがあるので避けたい。やはり森で野宿するか・・・。


 そう思っていた瞬間、


 「シイゼテさん、イーギさん、シイマさん。」


 とレソに声をかけられた。


 「どうしました?」


 とシイゼテが返事をすると、レソが、


 「今日の件は本当にありがとうございました。私一人では彼らに敵わず、あなた達の助けを借りてしまいました。」


 と礼を言った。


 「いや、大丈夫ですよ。あなたの危機は、この村の危機と同然ですよ。また何かあったら、その時は僕を、いや、村のみんなを頼ってください。」


 とシイゼテが返した。すると、


 「いえ、これは私一人の問題だったのです。ですから、あなた達のお手を煩わせてはいけなかったのです。それなのにこのようなことになってしまって・・・。」


 とレソが謝ろうとした。


 「レソさん、そこまで考えなくても・・・。」


 とシイゼテが発言を遮ろうとするも、


 「本当に、もうしわけ・・・!」


 とレソが頭を下げようとした。その瞬間、


 「あーもう、謝るな!」


 と言い、俺は立ち上がってレソの肩を押し、それを制止した。


 「・・・え?」


 とレソがキョトンとしていた。ここはひとつ、ビシッと言わなきゃな。


 「アンタには、やらかしてることが3つある!」


 「やっ、やらかしている・・・?」


 ほう、分かってないようだな。


 「まず1つ目!アンタは自分のために他人が何かすることを全て《《悪いこと

》》だと思っている!いいか?もっと自己中になっていいんだよ。だから、自分の利益になることは、感謝することはあっても決して謝るな!」


 「あ、謝らない・・・。」


 レソは俺の勢いに押されていたが、そんなことは眼中になかった。腹の中にたまっているものを吐き出すのに夢中だった。


 「そんで2つ目!許されることを重点にし過ぎ!やらかしたらやらかしたでいいんだよ!確かに、他人に悪いことしたならそりゃ謝るしかねえが、俺達が謝るのは自分を許すためであって、人に許されるのはそのための手段に過ぎねえんだよ。」


 「は、はぁ・・・。」


 「もっと言うと、やられた側は相手を許すことで自分を許すことになるんだがな。ま、つまり、自分に甘くなっちまえってことだ!」


 「・・・。」


 「最後に3つ目!謙虚と卑下をごっちゃにして、自分に全てを押し付けてる!悪くないのに自分が悪いとか言われると、距離を取られてるようで嫌だ!主に俺が!つまりこれは俺のエゴだな。まあ、仲良くしたいってことだ。よろしくな!」


 「・・・。」


 「まあ、なんつーか。その、が本当のあなたじゃないってことはもう分かってて、それがあなたにとってつらいものだってのも分かる。だから、あなたには素直になってほしいんだ。」


 言い切った。最後のあたりに俺の欲が出た気がするが、まあいいだろう。


 そうやって少しクールダウンしていると、


 「イーギさん、シイマさん。」


 と俺達に声をかけ、


 「泊まる場所がないんですよね。その・・・私の家についてきてほしいんです。」


 と言われた。おいおい、これってもしかして、エロシーン突入フラグなんじゃねぇの!?やべえよ、ムラムラしてきたぞおいぃ!


 作者がこの物語に18歳未満閲覧禁止というラベルが貼られてしまうことを危惧していると、


 「アヒャヒャ・・・!」


 とイーギが笑った。


 「お前、何笑ってんだ?」


 「いや、何でもねえヨ・・・ククッ。」


 経験則からすると、コイツが笑うときは大抵ロクなことが起きない。慎重に事を運ぼう。


 俺は細心の注意を払い、この体感型エロゲーを攻略することにした。

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