Garden of Mensis -Night-

さいとういつき

ヴァーリ -Vali-

 穿たれた鉄の杭が腹から背中に至り、ベッドに彼のからだを縫い付けた。愛液のごとき甘い血がぶわりと染み出す。あぁ、と、小さな声が聞こえた。

 最初は苦しいものだ。教え諭すように伝えてから、彼の太腿のうえにまたがって、次の杭を左肩に突き立てる。苦し気に身じろぎする彼は、もはや絶頂のときを迎える瞬間ように、髪を乱し、息を荒げ、小さく震えていた。だが喜ばしいことに、本当の享楽はこのあとにある。

 彼の腹にある杭をねじって、何度か左右に揺らしてから抜き放つ。か細い嬌声が熱を持った吐息と混ざり合って、カヌスの耳に届いた。こうなっては我慢ならない。カヌスはズボンのベルトを片手で乱暴に外すと、前をはだけさせる。すでに限界まで張り詰めている。下着という概念の煩わしさに焦らされながら、杭を抜いた手を彼の腹に突っ込む。

 温かく湿っている。ぬるぬるとしていて、かき回すたびにぐちゅぐちゅと淫靡な音がする。残る手も腹のなかへ突っ込むと、短い悲鳴とともに彼のからだがビクリと一つ震えた。流れるのは月色をした鮮やかな血だけでない。汗に涙に涎に、どれをとっても蠱惑的で、彼の体内をまさぐる手を急かせる。

 掴んだのは、腸だろうか。長く丈夫な部分だ。引きずり出して、その見事な色合いに恍惚の吐息をこぼした。すぐに自分の腰元へと絡めて、ぬるぬると滑らせる。何度もこすりつける。まだそのときではないというのに、夢中になりすぎて、うっかり白濁の欲望を出してしまった。

 すまないと、熱っぽい顔の彼に詫びる。一人でさきに終わらせるような無礼を働くつもりはないのだと言い訳をして、次こそまっとうな交わりを果たそうと約束した。

 彼の腹に、腰のものを深く入れる。冷めない彼の熱に、またカヌスが脈打つのがわかる。

 彼のなかは心地よかった。以前に出会った誰よりも濃厚に思えた。そうだったのか、君は。カヌスはゆっくりと出し入れしながら、小さくこぼす。こうして徐々に気分を高揚させてから、彼の腹の中へまた手を差し入れた。適当な肉を掴んで手繰り寄せ、まとわりつかせていっそう激しくこする。次第に呼吸も乱れた。最後に彼のなかへすべてを出し切って終わりだ。

 大きく身を震わせたカヌスは、脱力したように彼のうえに倒れ込んだ。しばらくは荒くなった呼気を整えるのに時間を費やした。それから、気怠い顔で起き上がると、緩慢な動きでシャツのボタンをはずしていった。一つ、二つ。途中からそれも億劫になって、太腿のあたりにまとわりつく裾をひっつかんで、裏返すように脱ぎ捨てる。ベッドから滑り降りて、中途半端に足にひっかかったズボンを床に放り出した。もはや動きようのない彼はすでに眼中になく、ただシャワーを浴びることだけが目的だった。

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