四具間

エリー.ファー

四具間

 四つの間違いを見つけて、ハワイに行こう。

 というキャンペーンが商店街で行われていた。

 私は、ハワイに行きたいので、それに参加することにした。

 ルールは、そのまま。

 この商店街の中にある四つの間違いを見つけて、それを商店街の駅側の出口にある、キャンペーン用紙に書くこと。

 早い者勝ちらしい。

 この商店街は中々にユニークなのである。

 去年は四つの間違いを見つけてサウジアラビアの油田を一つプレゼントであったし。

 その前の年は四つの間違いを見つけてウィスキーを三本貰おう、であったし。

 その前の前の年は四つの間違いを見つけてクーラーの掃除を無料でしてもらおう、だった。

 私が生まれる前からやっている、この商店街のプレゼントキャンペーンは、昔はこの町が処刑場であったことからはじまったそうだ。やはり、エンターテイメントであると考えると、人も集まったのだし、何かお祭り的なことをしたくなるのは当然と言える。しかも、参加者を募るという形式は結果として盛り上がりも大きくなりやすい。

 よく考えているではないか。

 私は静かに感心した。

 一つ目の間違いを発見する。

 これは余りにも簡単。

 八百屋でサッカーボールが売られている。

 なんとも分かりやすい。

 八百屋の店主は、全裸で張り切っている。

 これは。

 これは、間違いなのか。

 全裸を間違いとすると、この八百屋で間違いが二つあることになるし。

 仮に。

 全裸の店主を仕込みなしの現実だと仮定すると、サッカーボールもあながち間違いとは言えなくなる。

 いつも会っている八百屋の店主が全裸で叫んでいるのは余り長く見ていられない。

 次に行くことにする。

 歩いているうちに商店街が今日に限って中々おかしいところが多くなっていることに気が付いた。

 例えば、和菓子屋ではずっと誰かのすすり泣く声と笑い声が聞こえてくるし、パン屋からは子供たちが包帯をぐるぐる巻きにした状態ですし詰めになっていた。

 およそ。

 私の知る商店街ではなかった。

「バージョンが違うのかもしれない。」

 どこからか、声がする。

 空から聞こえてくるのだ。

「どうしますか。博士。このバージョンを実行し続けると、本人にも余り良い影響は出ません。」

「いや、記憶を消してしまえば、なんとかなるだろう。」

「しかしです。博士。消せる記憶にも限界があります。」

「大丈夫だ。記憶を消すのではなく、あくまで夢だったという記憶の上書きにすれば納得するだろう。」

「確かに、それは名案です博士。」

「よし、そーれそれそれ。」

「博士、掛け声マジでクソだせぇっすよ。」


 四つの間違いを見つけて、ハワイに行こう。

 というキャンペーンが商店街で行われていた。

 私は、ハワイに行きたいので、それに参加することにした。

 ルールは、そのまま。

 この商店街の中にある四つの間違いを見つけて、それを商店街の駅側の出口にある、キャンペーン用紙に書くこと。

 遅い者勝ちらしい。

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