第17話「人造死霊術(後編)」

「───カラクリは何だ、ロベルトぉぉぉお!!」


 叫ぶエミリア。

 そこに、しつこくすがりつくものがいた。


 半分にしてやったエルフが、なんとまだ動いている。


「ッ……この!!」


 踏みつぶしてやろうかと足を振り上げたエミリア。


 だが、奇妙なことに気付き、眉を顰める。

 なんと、動いているのは半分の片方だけ。

 ───もう一方はピクリとも動かない。


 …………こ、これは?


「キィ、キィ、キィィイ……!」


 エルフの頭部からウゾウゾと、蠢く昆虫の様なものが顔を出し、必死にエルフのもう半欠けの脳ミソににじり寄ろうとしている。


 そして、そいつの先端が半欠けの脳に触れたとたん、ビクリ!! と、半分に裂けたエルフがまた動き始めた───。


「おや、おやおやおや……。これは、これは───ネタがバレてしまったようですね」


 まいった、参ったと、天を仰ぐロベルト。


「そうです───。これは完全な死霊術ではありませんよ。見てください」


 そう言ってロベルトが懐から取り出したのは、真っ赤な幼虫のような気味の悪い物体。


「これは、寄生型ホムンクルス───。この子は人体に寄生し、宿主が死ねば宿主を乗っ取り動き出すのです! 私が死霊術を解析し、その様に作りました!!」


 こ、コイツ───!!


「それがお前の研究成果なの───」


 馬鹿め───。


「そんなものは死霊術ではないわ!!」


「そうです、そうです!!───だから……だから、あなたが欲しい! 今すぐッ!!」


 さぁ、愛しきアンデッドよ……!


「───かかれ!!」


 ズルリ…………。

 ズルズル…………。


「うううううう……」

「ぐぐぐぅ…………」

「あーうー…………」


 戦士、双剣使い、虚無僧までもがドロリと動き出す。


 そして、半欠けのエルフも……。


「くだらない───」

「ふふ、どうでしょうか? 死体が起き上がり襲い掛かる───その恐怖!!」


 とくと、味わいなさい!!


「くだらないと言ったぁぁあ!」


 エミリアは気合い一閃!


 カッ! と、目を見開くと、

「ふ──────……ようはホムンクルスとやらを破壊すればいいのね?」


 ならば、


 ──────グシャッぁぁあ!!


 エミリアは足元で蠢くエルフの頭部───そこに巣食うホムンクルスを、思いっきり踏みつぶした。


 すると思った通り、エルフがビクリ! と震えて──────止まる。


「そうですよ!! ですが、できますか! その優秀な武器と剣だけで、全てのホムンクルスを破壊することが」


 さぁ!!! やってみなさい!!

 ロベルトが余裕の表情で死体を指し示す。


「ふっ」

 対する、エミリアは小馬鹿にした笑いをニヒルに決めると───。


 ジャキ──────ズドン!!!


 頭部をぶっ飛ばされた戦士がグシャと、湿った音を立てて倒れる。



 ……ドサッ。



「───できるわよ?」


 背中に背負っていたショットガンを構えたエミリアが、ガシャキン───と、ポンプアクションを決めると薬莢を排莢し、再装填。


「え? あ? な……?」


 ポカンとした顔のロベルト。


「……お馬鹿・・・な『大賢者』さん、」


 ジャキ──────ズドン!!

 グシャアア──────どさり。


 双剣使いが斃れる。


「───こんなノロマを量産したところで、私に敵うとでも?」


 馬鹿め……。


 S級の冒険者どもが元より強くなるならまだしも───。

 弱体化した死体を操ったところで、何になる?


 すぅぅう、

「──────死霊術を舐めるなッ!!」


 ショットガンを担うと、大剣を代わりに携え、鋭く踏み込み───ズパンッ!! と虚無僧の首を一刀のもとに跳ねる。


「な、ば……ばかな!」

「バカはアンタよ───大賢者さん」


 さぁ、そろそろ年貢の納め時。


 他の連中残りの勇者パーティの情報をたっぷり吐き出してから───。




「死になさい!!」




 チャキっ!! 


 美しい所作で剣を向けると、ロベルトが青い顔で後ずさる。


 だが、

「ふ───ふふふふふふふふふ。ふははははははははははははははは!!」


 言ったでしょう───!!


 寄生型ホムンクルスは人体に寄生し、宿主が死ねば動き出すと!!!


「なに?……………………ッッ、まさか!」


「さぁさぁ、お手並み拝見──────死霊術の先輩エミリアさん、私の軍団を降して見せて欲しい!!」


 コイツ!!


「うううああああ…………」

「「ぐるるるるるる…………」」

「「「あーうーあー……………」」」


「「「「「おおおおおお………!」」」」」



 な、なんてやつ!!


「───ま、まさか、帝国軍全体に寄生虫をばら撒いたの?!」


「はははははははははははは!! 当たり前でしょう! アナタが来る・・・・・・のです。備えておきました」



 この、

「───外道がぁぁぁぁあああ!!」




 なんてことだ。

 ……全帝国軍が再び起き上がる!?

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