第16話「vs S級冒険者(後編)」

 これは、コルトガバメント。

「───45口径の拳銃よ!!」


 特と観なさいッ!

 アメリカ軍の、鉄の拳の威力を───!!



 パァン、

 パァンパァンパンパンパンパンパンパン!



「ぐぅお!!」


 戦士の身体に拳銃弾がめり込むと、まるで巨大な拳でぶん殴られたかのように動きが鈍り、ガクリと膝をつかせる───!


 見たかッ!!


 コルトガバメントの、45口径───45ACP弾のマンストップ効果は伊達じゃない!!


「ぼ、ボルドーぉぉおおお!!」


 崩れ落ちる戦士の背後にいた双剣使いが、驚愕の表情を浮かべている。


 まさかやられるなんて?───そう思っている顔だ。


 だが、容赦などしない───!


「ヒッ!!」


 銃を向けるエミリアに驚き、身体を硬直させる。

 未知の武器、未知の攻撃に思考停止状態に陥っているのだ。


「───そういうときは、伏せるのよ」

 もう遅いけどね!


 パン、パン、パンパンパンパン!!!


「あぐッッ!」

 グシャ───と、変形する顔を見届ける事なく、エミリアは弾切れの拳銃を空に放り捨てると、疾走ッッッ!


 そのまま、双剣使いの身体が崩れ落ちるのを見越して、彼の身体を飛び越えざまに、その後頭部を蹴り飛ばして、背後にうっちゃる!


 そこには、ちょうどエミリアの死角を突こうと、攻撃をしかけてきた虚無僧風の男が、双剣使いの身体にまともにぶち当たる。


「ぐ───!!」


 どうやらエミリアの背後を突こうとしていたようだが、───見え見えだぁぁあ!


 双剣使いを蹴り飛ばして稼いだ滞空距離をそのままに、クルリと頭を下にして背後を振り返るムーンサルト!


 まるで、空中で制止するかのように跳躍。


 反転した景色の中、スチャキ! と、新しい拳銃を二手に構えなおした。


 そして、しっかりと拳銃の照準を虚無僧風の男に付けると、

「───背後バックから無理やりって、好きじゃないの」

 

 パン、パン、パンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンッッ!!


「………………ぐふッ」


 ガクリと崩れ落ちる虚無僧風の男。

 深編笠の下から、ドクドクと血が流れているのが見えた。あれは即死だろう。


「このぉ!! ダークエルフぅぅぅうう!」

「そうよ? それがなにか?───森のエルフさん」


 憤怒の表情で矢を放つエルフ。


「───空中で躱せるものかぁぁぁあ!!」


 ビシュン!!


 凄まじい勢いで放たれた矢を、ガキィィィン───! と、ガバメントを交差させて弾く。


「───躱す必要なんてないわね……。貧弱な森エルフめが!!」


 クルンと体を捻り態勢を元に戻すと、バサバサと黒いマントをはためかせてエミリアが迫るッ!!


「ひぃ!!」

ーーーーー、らーーーー、えーーーーー!!」


 バサバサバサバサッ!!


 巨大な黒い蝙蝠───?

 いや、

「───あ、ああああ、悪魔ぁぁあッ?!」


 悪魔ぁぁあ?


 ハッ!

 違う───魔族のエミリア・ルイジアナである!


 ガッツン!!! と凄まじい衝撃の下、エミリアは弓使いのエルフに着地すると、

「こんにちわ。魔族の軍人なら、アナタまぁまぁの使い手よ──────さようなら」


 パァン!!


 ……ドサリ。

 力なく倒れ伏した弓使いのエルフ。


 エミリアは弾切れになったその一丁をポイっとエルフの亡骸に投げ捨てた。

 そこに、まるで図ったかのようにエルフを見下ろすエミリアの手に、さきほど戦士に弾かれたエミリアの剣が降ってきた。


 ヒュンヒュンヒュン!!



 …………パシィィ!! 



「ヒュゥ♪ あっと言う間に殲滅ですか!」


 パチパチパチと、乾いた拍手で白々しく笑うロベルト。


「これがS級?……こんなものがアンタの隠し玉?」


 ───違うでしょ?


 そう言って堂々とロベルトの前に立つ。


 両者ともに美しく笑う───。

 そして、激突のとききたる…………。

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